ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本(向山淳子、向山貴彦、幻冬社)
「ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本」は山口県の梅光学院大学文学部向山淳子教授と作家の向山貴彦による英語学習本です。2001年12月20日に幻冬社から第1刷が出版されましたが、わずか3ヵ月後の2002年3月5日に第13刷が出されており、新刊当時は相当話題になった書籍です。村上龍や坂本隆一も推薦コメントを寄せています。
向山淳子氏は1936年生まれで、1962年に米国へ留学、20年以上を米国の地で過ごしています。当時の時代背景を考えると、氏が学生のころにアメリカで通用する英語教育があったとはとても思えません。そのような苦労の中で英語の本質を見極めてきた筆者のノウハウが、このかわいいイラスト入りの英語入門書に集約されています。
本書の根本は、大西泰斗氏の一連のシリーズと同様、「ネイティブの感覚」を徹底的に解説しています。「主語」を「主役」、「動詞」を「矢印」、形容詞を「化粧」など、一般的な文法用語を極力排除し、A→B(I eat an appleなど)とA=B(He is a studentなど)の2構造を文章から読み取っていくコツを教えていきます。基本的な内容は、大西泰斗「ハートで感じる英文法」とほぼ同じと言ってもよいと思います。
本書のもう一つの特徴は、1つの物語を最初から最後まで英語で読ませることにあります。向山教授は「唯一の英語の勉強法は、まず読むことだ」と言います。そして「日本の英語教育では、ほとんどの学生は1冊の英語の本も読み終わらない」と指摘します。
いろんな英語「参考書」を読んできた私ですが、この「英語の本を読み終わらない」という指摘は一瞬分からず、そしてなるほどと感じました。英語の参考書やそこに書いてある断片的な文章やコメントは、もっぱら文法の知識や練習をするための「材料」に過ぎません。そのレベルでも会話のやりとり程度はできるかもしれません。しかし自分のことを深く話したりすることはできません。なぜなら「ストーリー」を構築できないからです。
本書のいう「英語の本を読む」というのは「英語で1つのストーリーを最後まで読み、そのメッセージを感じ取る」ということだと思います。そのために、大変短いものではありますが、向山貴彦氏作の「THE BIG FAT CAT」と「THE RED BOOK」という2本が収録されています。前者はほのぼの、後者はちょっと怖いお話ですが、少し難しいと思われる単語には日本語訳のルビが振ってあり、音読で読み下せば日本語訳をせずにその内容が分かるようになっています。
私も音読でこれらの物語を読んでみました。読後、それは確かに「久しぶり」の感覚を得ました。英語の物語をちゃんと読んだのはいつ振りでしょうか。適当に英会話が成立しているというレベルを超え、英語でメッセージを理解し感じるという経験は、英語使いを目指すものとしては間違いなく必要なことです。
この本は宮下本でも三ツ星の評価でした。決して新しい本ではありませんが、初心者がそれまでの殻をブレイクスルーするための力を、今も持ち続けている本だと思います。この物語2つ(ルビ付き)と大西泰斗級の解説がついて1300円は、お値段以上と評価させていただきます。









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