繰り返しになりますが、このシリーズでの定義に基づき「学生のブランド」という言葉を説明すると「(面接がすべて終了した後)面接官がその学生の名前を見るだけで勝手に連想させる何か」となります。「勝手に連想」わけですから、あなたが意図としたことを連想してくれているかどうかの保証はありません。
前回のコラムで、学生は面接官に「過去の背景」と「将来の期待値」という2つのブランドを残すと書きました。しかし現実問題として過去の背景なしに将来の期待値だけ信じろといっても困難です。過去の背景は本来のブランドの意義である「信頼」の原材料であり、信頼のない期待はありえません。
もちろん、自分自身の様々な経験や実績で過去のブランドをアピールすることがもっとも大事です。しかし多くの学生は一発でブランドを印象付けるような強烈な経験が不足しています。そのような場合には、自分が所属しているブランドに一度立ち返ってみることも大事でしょう。今回は、「大学ブランド」をどう活用できるかを考えてみます。
社会では、職業や所属を抜いて関係を持つことはまずありません。会社員がその会社のブランドを背負って仕事するように、学生はその大学のブランドを背負って就職活動に臨みます。また今や「大学のブランド=偏差値ブランド」ではありません。民間主導の世の中になり、企業の求める人材像は偏差値評価の正反対になったと言えるでしょう。その価値観を理解したうえで、母校のブランドをどう活用するか、もしくはブランドを越えるか研究することが大事です。
誤解しないで欲しいのですが、面接の場でその大学のブランドを延々と説明しろということではありません。大学のブランドはすでに相手の中にあるものです。そのイメージとあなたが重なった時に、どのようにして自分にプラスにもっていくかという点が重要なのです。以下具体的な例を挙げてみます(具体的な大学名を出し失礼な部分もあるかと思いますが、個人的な意見としてご容赦ください)。
一般の人が大学のブランドとして想起するものは以下のようなものが挙げられるでしょう。
- 偏差値・学力
- 有名教授、有名ゼミ
- 国際的。語学に熱心
- 司法試験や会計士試験など資格取得に実績
- スポーツが強い。有名スポーツ選手の出身
- 有名経営者の出身
- 著名人、タレントの出身
スポーツが盛んな大学は、活動的なイメージを持ちます。駒澤大学は仏教系大学のひとつですが、多くの人や企業にはもはや「箱根駅伝」のイメージで捉えられているでしょう。駒大生にとってこのブランドをあなたにかぶせない手はありません。また明治大学、法政大学、日本大学などは野球やラグビー、アメフトなど様々な分野の強豪校であり、有名プロ野球選手などを多く輩出しているため、スポーツイメージが大きい大学です。もちろんそこの学生が誰でも体育会所属というわけではありません。しかし体育会のもつ「明るさ」や「元気さ」が感じられない学生には、面接官は違和感を覚えることでしょう。そのような学生を採用するよりは、同じ大学で元気のいい学生を採った方がいいと考えるのが自然です。
「元気」と「仕事ができる」というイメージは重なるものなのです。
上智大学のように語学や国際教育で有名な大学で、そのような専攻をしてきた学生はアピールが楽です。大学ブランドと自分の力を面接官に重ねて見させることができます。しかし語学と直接関係ない学部はあるでしょう。そのような学生でも大学のブランドを放棄するのはもったいないことです。確かにTOEICの点数は語学専攻生と比べてかなり見劣りするでしょうが、質問に及んだとき「語学専攻ではありませんが上智大生としてはずかしくない程度の勉強はしています」などと答えれば、面接官は自分のもっている大学ブランドと合致することで安心することになります。
中央大学法学部といえば司法試験の名門として有名です。ここの出身学生で民間企業を受けるときには、必ず「司法試験は受けないの」と聞かれているのではないでしょうか。このとき「あまり勉強しなかったので…」などと正直に答えれば、中央大学法学部というブランドを一切「放棄」することになります。法律は法曹のものだけではありません。社会では契約という法律行為やコンプライアンス(法令順守)が重要です。司法試験の話を聞かれるということは、専攻である法律のことはどうするのという質問と同値ですから、法学部生として一定水準の答えを用意し、大学・学部ブランドを活用すべきだと思います。この考え方は「理系から広告」という学生にも当てはまるでしょう。理系学生は一定の知力があるというブランドがあります。詳しくは「理系学生の規定演技」をご参照ください。
卒業生が大学のブランドに大きく影響することもあります。日本マクドナルド原田永幸CEO(元アップルコンピュータ社長)は東海大学、ヤフーの井上雅博社長は東京理科大卒、楽天の三木谷浩史社長は一橋大学卒、イトーヨーカドーグループ鈴木敏文会長は中央大学卒など、有名ブランド会社の社長が卒業した大学の在学生は、それを活用しない手はありません。大学ではありませんがライブドア堀江貴文社長が卒業し、ソフトバンク孫正義社長も在籍していた久留米大学附設高校は、ITベンチャーを輩出する学校として一躍有名になりました。もともと企業人として他社とビジネスするということは、先輩が築いたブランドを元に現在の自分に期待してもらうことです。自分自身に根拠があろうがなかろうが、先輩のブランドを語れるのは後輩の特権なのです。社長でなくても、著名人・アーティスト・スポーツ選手でもいいでしょう。面接官が初めて知る事実でも構いませんので、自分とかぶせやすいイメージの先輩がいるのであれば、積極的に使ってみてください。
最後に「女子大」ブランドについて言及します。広告業界に限らず、女子大の「良妻賢母」ブランドはビジネスの場ではプラスには働かないと思われます。社会は男女同数、ビジネスの場では今でも男性が多く、普段からの男性との向き合い方も重要な素養ですから、同じ資質の女性であれば女子大ではなく共学から採用したいと思われても非難はできないでしょう。女子大の学生はまず一般的な女子大のブランドと向き合い、それを乗り越えた自分固有のブランドを作る必要があるといわざるを得ません。それには実際に総合職として勤務しているOGに話を聞くことがもっとも効果的です。業界を問わずひたすらOG訪問するべきでしょう。
みなさんが今の大学を選んだ理由は人それぞれでしょう。しかしどんな大学でも、あなたという個人よりはブランドがあります。一旦そこを選んだのであれば、その大学の持つ「よい」ブランドは目一杯活用すべきです。大学のブランドとあなた固有のブランドが相乗効果を生むことで、あなたの将来を期待する理由が生まれてくるのです。
今や就職実績が大学の命運を決める材料になっています。みなさんは知らないかもしれませんが、就職活動シーズンに中高年ビジネスマンが読むような雑誌に大学の広告が出ていることがあります。みなさんの自己PRの時に少しでもいいブランドイメージをかぶせてもらえるよう、大学もあらかじめ企業に自己PRをしているのです。
大学がどのようなブランド戦略・PR活動をしているかを知り、大学有名OB/OGからスポーツ実績まで総動員し、あなたのブランドを高める上での母校ブランド活用作戦を準備してください。