採用担当の方へ

2005.12.11

「40歳までのキャリアプラン」に「結婚・出産」を入れるべきか。

ある広告代理店のエントリーシートで「入社して40歳までに、どのような人生の計画を考えますか?」という課題が課されています。これに関し女子学生から「結婚や出産といったことも書かなければいけないのでしょうか」という相談がありました。

この件について、知り合いの社会保険労務士の先生にヒアリングしたところ、以下のような意見をいただきました。

・この会社は社員のキャリア形成支援に力を入れている。新卒採用にこのような課題を課すのは、その人の価値観やどのようなプロフェッショナリズムを目指すのか、そのためにどんな心構えや計画を持っているかを知りたいのであろう。

・キャリア・プランは2年先くらいまでの近未来、5年先、10年先、ライフ・プランといったスパンで記述するのが一般的。近未来は自己の能力開発などの実行計画を、遠未来は昇進・昇格や結婚・出産などのライフ・イベントをも想定して書くもの。

・一般論でいえばこの設問は職業観や信条、キャリアゴールを問うものであるため、自分の考えを率直に記述すればよいと思われる。ただしこれは建前であって、結婚・出産に対する取り組みは企業や組織のカルチャーによって微妙に異なるのが現実。この会社の福利厚生の方針や施策の具体的な内容なども念頭に置いて記述することが勧められる。

この話からも分かるとおり、キャリアプランというのはプライベートも含めた自分の人生と密接なものだと言えるでしょう。自分の人生の多くの時間を費やす会社がどのようなキャリアプランを支援してくれるかは、会社を選択する、または勤務している側からすればとても重要なことです。

しかし学生のキャリアプランを「選考の材料」にするということはいかがなものでしょうか。

今、日本の抱える諸問題の根源は「少子高齢化」だといえます。子供を2人、3人と持ちながら仕事ができる環境を整えるのが日本の課題であり人気企業の務めです。会社に子供を作ることはできません。企業の社会的責任(CSR)の基本は今や社員の子育て支援にあると言えるのではないでしょうか。

とはいえ、女子学生にとってこの質問では「出産」をどう表現するかが最大の難関です。果たして2人まして3人子供を持つと、このエントリーシートに書くことができるでしょうか。1人が限界の社会では少子は進行するばかりです。また男子学生が「育児休暇をとる」と書けるでしょうか。

人生は自由であり、結婚も出産も計画的にはいきません。その時々に人生の転機があります。個人的な意見ですが、会社が「選考の材料」としてキャリアプランを書かせるのは、その企業が出産・育児に関して男女の区別なく全面的な支援の姿勢をもっている場合に限るべきだと考えます。出産・育児への対応について事前に学生へ十分な説明がなされない中でこのような設問があるとすれば、それは不適切なものだといわざるを得ません。

この会社で育児支援に関する事前説明があったかは分かりませんが、社会保険労務士の先生の指摘にあるとおりこの会社はキャリア形成支援に力を入れている企業であり信頼できると思われます。今回のケースに限っていえば堂々と自分の考えを書くことが大事であり、入社後にそれをきちんと履行してもらうようにしましょう。

しかし子育て支援の姿勢がない会社がこのような質問を出せば、当落を決める材料にする恐れがあります。上記社労士の指摘の通り、その会社の福利厚生の方針や具体的な内容をきちんと調べることが重要です。

※この課題に取り組むには、山本直人氏(元博報堂人事ディレクター)の「グッドキャリア キャリアがブランドになる時」が参考になると思います。ぜひご一読を。

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2005.11.05

「まず、名乗る」のは学生だけか。

採用する立場から求職者と面接をすると、うっかり先方の話ばっかり聞いてしまうことがあります。しかし求職者の方はあくまで興味のある会社の一つとして考えているわけであり、その会社に行くことを決めて面接しているかどうかの保証はありません。

ましてや求人側が新設のベンチャー企業であれば、求職者は出資構成やベンチャーということ以外の情報を知る由もありません。新設企業が取引先に会社概要から説明するのと同様、求人側も求職側に自社の説明をするのは当然のことだといえるでしょう。私も自社のこと・経営方針・目標・共有してもらいたい価値観をきちんと説明し、お互い理解を深めた上で双方が雇用契約書にサインする/しないを決めようと努めています。

これまで多くの広告業界の新卒採用過程を見てきましたが、企業側から学生側に自社の説明をする機会を持っているところは少ないと思っています。特に中堅の総合広告代理店に顕著でしょう。これらの広告代理店を辞退しベンチャー企業に行く学生は多数いますが、それはただのイメージの優劣ではなく、ベンチャー企業の方がきちんと学生にプレゼンし、その価値観に学生側もきちんと共鳴したからなのではないでしょうか。

企業が学生に資質と仕事への熱意を求めるのと同様に、学生も企業に可能性と採用への熱意を求めています。学生だけに名乗らせ、自社の判断で内定を出す出さないだけが主要な採用活動と考えている企業に、いい人材が集まるはずはありません。

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2005.10.15

取り違えていませんか、「OB/OG」の意味。

募集要項で、「OB/OGの紹介は実施していません。各大学の就職課でお調べください。会社説明会も実施いたしません。」としている会社は結構あります。

しかし学生にとってのOB/OG訪問はその会社のことを研究することに他ならず、学校の先輩と旧交を温めるためではありません。すなわち就活におけるOB/OGの定義は「その会社の現役社員」そのものであり、出身大学はどこでもいいわけです。

もともとOB/OG訪問という言葉は、様々な大学で新卒採用実績のある大企業への就職にしか当てはまりません。比較的小さい規模の会社の募集要項に「OB/OGの紹介も会社説明会もない」と書けば、OB/OGのいない学生には「当社は社員による説明も、会社による説明もするつもりがありません」と映っているのではないでしょうか。逆に見れば、「新卒採用実績のある大学以外はフォローしません」とも受け取れます。

そもそも広告業界は黒子の役割であるため、具体的にどんな広告に携わっているのか、主要取引先はどこかなどはHP情報からも分からない場合が多いでしょう。実際に働いている社員に多少でも会っておかなければ、その会社のことは何も分からないといっても過言ではありません。このような会社が、採用面接で「なぜ当社なのか」「どんな部署を志望しているか」、ましてや「誰か社員には会ったのか」といった質問をするのはもはや悪い冗談とも言えます。

とはいえ実際に受け付けたら、大量の学生の問い合わせをさばききれない・説明会の会場を確保できないと思う採用側の気持ちも分かります。しかし様々な学生を見てきた経験から言えば、何も書かなければOB/OG紹介の問い合わせが殺到するということも(超有名・超人気企業でない限り)ありえないと思っています。もちろん安易に社員を紹介すると書けば殺到するでしょうが、「何も書かない」という方法もあるはずです。

自らOB/OG紹介の問い合わせをしてくる学生は、他の学生よりはるかに行動的で、より大きな関心を寄せている人物です。リクナビをはじめとしたネットでの就職活動が全盛となっている現在、自ら電話をして企業にアクセスし交渉するというだけで、基本的な行動力とコミュニケーション力を持っていると推定できるのではないでしょうか。

新卒での採用実績大学数が少ない会社は、OB/OG訪問の門戸を閉じてしまわないことで、いい人材を早期に発掘することができると思います。採用人数が若干名というのであればなおさらでしょう。採用担当の方には、OB/OGの固定観念にこだわらず熱心な学生のニーズに応え、第一線の社員の時間を割いてもらい会っていただければと思います。

会社説明会も、最初の筆記やエントリーシート選考直後に開催するなど、現実的な人数を対象に実施するアイデアはあるはずです。また第一回広告労協就職フォーラムや今年度読売エージェンシーの会社説明会が実施された「シニアワーク東京(飯田橋)」の地下大会議室は、250名程度を集めることができ、プレゼン設備も充実した施設です。就職説明会という目的であればホテルの会議室より格安に実施できると思います。ぜひ検討してみてください。

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2005.07.16

「不合格棟」。

「書き間違え」「誤植」という言葉は、IT時代には「変換ミス」という新しい形になりました。過去にも指摘した「適正試験」や「一時面接」はその代表的な例です。

これに関連し以前学生の方から次のような報告をいただきました。

先日某IT会社の人事から不合格の手紙が来たのですが、
私の住所   「*-** 棟***号室」なのですが
表紙の住所には「*-** 不合格棟***号室」と記載されていて腹が立ちました。かなり失礼だと思うのですが、何かのミスでしょうか?

このPCで「C」という文字を入れると「不合格」と変換する設定をしていたのでしょう。この会社ではC評価が不合格を示すようです。

人事が落選者に送るメールで起きた人為的変換ミス。ここまでくると会社としての管理問題といえるでしょう。郵便配達の人にも見られている表書きの住所で「不合格」とは…。

この会社では「C」という文字を不合格評価だけにしか使わないのでしょうか。どこかの電鉄会社ではありませんが、合理性を追求する一方、フェイルセーフの観点が欠けていたのかもしれません。間違って「不合格」と変換されたものが一番送られてはいけない対象がどこか、そのイマジネーションさえがあれば、このように学生が傷つかずに済んだでしょう。

消費者へのメールだとしたらとんでもない事件に発展しているでしょう。それでもだまっている学生という立場の弱さを痛感せざるを得ません。

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2005.07.01

早くなる役員面接の結果通知。

7月4日の週は、広告業界新卒選考の最終面接がラッシュとなります。

7/2(土)ピラミッドフィルム役員面接
7/4(月)読売広告社最終面接/ADEX最終面接/フロンテッジ最終面接
7/5(火)読売広告社最終面接/毎日広告社最終面接/TOMOE役員面接
7/6(水)日経社役員面接/ADEX最終面接/電通ヤングアンドルビカム役員面接
7/9(土)、10(日)東北新社役員面接

広告労協Fさんの各社アドバイスや面接対策会にはここではとても言えないほど多数の応募があり、複数の会社の最終に臨む学生も少なくありません。

この最終面接の状況を見て、広告労協Fさんは「もしかしたら内定通知が早くなるかもしれない」と言っていました。もはや広告業界の採用担当者が広告労協の選考スケジュールを見ていないはずはありませんし、学生も複数社残っている可能性を知っています。気の利いた採用担当者なら他社から内定がでる前に早々に内定を出し囲い込みをするはずとFさんは分析します。さすがFさん、という指摘です。私が採用担当ならそうします。

面接の記憶など長く残るものではなく、役員の日程調整の困難さから言っても、役員面接後に日をあらためて役員が集まり合否決定会議をするということはまずありません。面接の場での点数の集計か合議で決めているに違いありません。採用担当者の手元にはその日のうちに結果が出ているはずです。その後いろいろな社内手続きがあろうとも、遅くとも翌日に内定(または健康診断を前提とした内々定)を出すことは可能です。

これだけかぶって受験する学生が多いと、内定を早く出すことは極めて重要です。志望度が高い会社から早く内定が出ると、その後の採用を辞退することもあるでしょう。そうでなくても早く内定通知は学生にとってありがたいことに変わりません。2社から声がかかったとしても、早々から見込んでくれた採用担当を信頼して進路を決めるということは珍しいことではないでしょう。

しかし残っているのが1社だけという必死の学生の方が多数派です。限られた採用枠がなるべく多くの学生に割り当てられればと願って止みません。そのためにも、少しでも早めに内定の連絡をしていただけるよう採用担当者の方にお願い申し上げます。

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2005.06.20

親の職業を聞き、笑う人事。

ある学生から、中小の代理店を受けた際のレポートが来ました。

二次面接で、社長を初め、会長、人事部長など5人の面接官がおり、学生は、4名でした。まず初めの質問は、通過の連絡を聞いたときどう思ったか。ここにくるまでどういう気持ちで来たか。次に、いきなり家族構成と、父親の職業を聞いてきました。

先輩の活動報告書にも書いてあったのでやっぱり聞かれたか・・・と思いつつ、答えました。現在私の父は病気で療養中だと答えたところ、え?前には仕事してたんでしょ?どんな仕事?と詰め寄られました。次の子は父親が建設会社の支店長をしているらしく人事が冗談で「毎日談合に忙しいんですか?」って言われていました。そこはみんな笑っていました。

私は結局落ちました。正直この会社に落ちてよかったです。

このことを友達に言ったら普通はそういうの今聞いてはいけないし、もし聞かれたら前の仕事言えばいいんだよ。と言われました。
分かっていても、その学生に対する判断基準の一部として親の職業があり、合否を左右してしまうのかと思うと、哀しくなり、投稿いたしました。
毎日通りすがりさんのブログを読ませて頂いていたので、こういう風に聞いてくること自体が普通ではないんだと改めて感じています。長々と失礼いたしました。

このようなことが横行すればするほど、広告という業界にネガティブイメージを持った学生が世の中に出て行きます。前回の私の「家族の最終学歴や勤務先・役職を書かせる会社。」でいただいたコメントにあるよう、まさにこの会社は「恥を知れ」といえるでしょう。

不適切採用情報提供フォームはこちらです。不愉快な思いをさせられ、しかも落とされた会社に何も配慮する必要はありません。事例を共有するためにもどんどん送ってください。

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2005.06.16

家族の最終学歴や勤務先・役職を書かせる会社。

ある交通広告に強い広告代理店に関して、最近以下のような報告がありました

また最終面接の前に家族状況を書かせる欄があり、家族の最終学歴や勤務先・役職を書かせるところまであります。
「記載内容に合否に影響が出ることはございません」とのことですが、ならばなぜ書かせるのか疑問が残ります。
「可能な範囲でご記入ください」ともあるのですが、最終面接まで進んでいることもあり、すべて記入しないわけには行きません。
そんなに古い体質が残っている会社なのか、と。

この会社ではエントリーシート記入の際も、「自己の主義・生活信条」や「愛読書」、「尊敬する人とその理由」という項目があったようです。これらについては、「採用試験で「尊敬する人物」を聞くこと。」というコラムでも指摘したとおり、公正な選考採用をする上で好ましくないこととされています。ましてや家族の最終学歴や勤務先・役職の詳細を「内定前に」聞くことは、「母子家庭は採用でマイナスになるか。」で書いたように、人権上も採用上も極めて大きな問題だといわざるを得ません。

この会社は以前より同様の採用を繰り返しています。このような人権軽視の傾向のある会社は、社長が老齢かつワンマンで、採用にも大きな影響力を与えている場合が極めて多いようです。人事という仕事は採用だけでなく人権啓発も重要な職務であり、このようなことは問題があることは分かっているはずです。しかしそれでも上申できないのは、社長の意向が大きいということしか考えられません(内定前の健康診断問題もこの傾向が見られます)。

広告労協では「不適切採用情報提供フォーム」を開設し、人権軽視の採用に関しての情報を集めています。春の採用シーズンが終わり次第、具体的な改善策の検討に入る予定です。

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2005.06.04

役員面接では交通費を出してあげてください。


(2004年5月13日に発表したものを再掲載。)

採用担当の方に謹んで提言いたします。地方学生のために、自身の会社のために、役員面接ではぜひ交通費を出してあげてください。

●地方学生が最終面接で落ちるということ。

広告労協の調査では、04年関東圏外の広告業界内定者の平均就職活動費用は平均で約20万円、最頻値は30万円台、最大は70万円台(北陸地方)という数字になっています。しかもこれは内定のある学生のみの統計であり、夢破れた学生の数字はもっと悲惨なものに違いありません。

地方学生が試験に臨むということは、費用だけでなく移動時間もかけているということです。また役員面接は一般に平日に行われることが多く、授業も出席せずに面接を受けている可能性が高いといえます。

役員面接で交通費が出ない会社は、間違いなくそれまですべての選考課程でも交通費を出していません。すなわち地方学生にとって最終で落ちるということは、それまでの費用と時間、そして受けるべきだった授業のすべてが無駄になるということです。

●落選学生は「会社憎んで、人事憎まず。」

地方学生が最終で落選したとき会社をどう思うか、役員の方はご存じでしょうか。彼らはみな「そんなことなら早く落としておいてくれ!」と悲痛な叫びをあげています。話を聞けばたいてい「役員面接でも交通費を出さなかったセコい会社でした」と愚痴をこぼします。そして空虚さの中で「役員」に悪印象を持って他の会社に行きます。最終に残るほどの学生ですから、多くは優秀な成績でクライアント企業に就職していくのでしょう。

しかし私の知る限り、採用担当を悪くいう学生は皆無です。役員面接まで残った学生は採用当局に対して自分を評価してくれたことに多大な感謝をしています。そして役員面接で一定数を落とさなければいけない事情を、学生自身も実感値として理解していると思います(「役員=お父さん、人事=お母さん」論を参照)

●本人に区切りを付けさせるためにも、役員面接での交通費支給を。

地方学生が役員面談で不採用になるショックは、それまでの過程が長く費用がかかるほど大きなものになります。本人にきちんと区切りをつけさせ、風評などネガティブなベクトルに向かわせないために、せめて費用面で多少の配慮をするべきだと考えます。

もちろん早い段階から交通費を負担することは、過剰なコストがかかるだけでなく、そのことで地方学生が不利になる恐れも否定できません。しかしせめて最終役員面接だけでも「会社の誠意として」交通費を支払うことは可能なのではないでしょうか

相手はそもそも無職の学生、そして対応如何では将来貴社のファンにも敵にもなりえる若者です。これは一種の企業リスク対策です。とはいえ、お願いしたいのは高々役員面接での交通費支給ということだけです。なにとぞご配慮いただければと思います。

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2005.05.29

地方就活生の負担軽減のために、何をすべきか。

広告労協の活動が始まって以来、多くの広告業界の採用で地方支社での試験が行われ、最終面接では交通費を支給するようになってきました。しかし、残念なことに今年から1次試験を全員東京本社に集めて実施している中堅広告会社があります。関西に支社があるにもかかわらずに、です。

自分は経費で出張できるのもかかわらず学生を東京に呼びつけ、バイトも授業も放棄して自腹で上京する学生のことを考えると怒りすら覚えます。この会社の関西支社社員には学生を見る目がないのでしょうか。

このような状況が今後変わっていくことを、いや変えていかなければいけないということを念頭に、2003年8月11日に発表したコラムを再編集したものを以下に掲載します。



(1)内定ありなしにかかわらず、数十万円かかる、就職活動。

今地方の学生が、就職活動にいくらお金を費やしているか、国会議員や行政は知っているのでしょうか。

地方の学生は、筆記を受けるためだけに夜行バスや学割新幹線・飛行機で上京し、採用担当と会話を交わすこともなく帰っていきます。面接試験に勝ち残る学生は、1次、2次と自腹で上京しますが、最終の役員面接で「地方から出てきたら親御さんが心配するだろう」といった理由で落とされることがあります。そのような学生は「そんな理由で落とすなら、最初から落としておいてくれ!」と悲鳴をあげています。このように、地方受験生の「最終落ち」の無力感は、それまでにかかった交通費、移動時間、出席できなかった講義のことを考えると、私たち社会人はもとより、在京学生にすら想像を絶するものになっています。

地方の受験生の就職活動への全面的な交通費会社負担はほとんど実施されていません。役員面接ですら交通費を出さない会社があります。もちろんこれは一概に否定すべきものではありません。例えば受験生の交通費の会社全負担が義務付けられるようなことがあれば、採用の過程で地方出身者が冷遇される恐れがあるでしょう。

しかし、今の学生には、少なくとも私が就職活動をしていた時代と違い、以下の点で大いに苦しんでいます。

地元での採用数が減っており、必然的に東京の企業も受験せざるをえない。
就職活動の早期化・長期化により、アルバイトも十分にできない。
不況により親の収入が減り、授業料の自己負担の割合も高い。
在学中から国民年金の支払い義務が発生している。

このような背景を考慮すれば、広告業界「内定者」でも平均交通費が地方学生で20万円を超え、50万円かかったという回答も少なくないというのは、極めて不幸な状況です(労協登録生04年入社での調査)。ましてや内定のない学生が大半であり、広告業界を目指した交通費は無駄になっていることを思うと、すでにこれは一つの社会問題と定義すべきものだといえるでしょう。

(2)就活生のための、3つの政策提案。

(1)「就活奨励金」制度

勤労者は失業時には雇用保険で収入を得、次の就職に向けて準備することができます。しかし、学生はどうでしょう。まだ税金や雇用保険を納めていないから、就職についての行政上の支援を受けられないというのでしょうか。

就職活動は、「将来税金を支払うための活動」といえます。教育を受けた将来のある若者がきちんと就職をし、税金を支払う環境を整えるのは、税収、年金、果ては社会の安定・発展にまで直結する日本の一大課題です。そのために国家・行政は、学生に「就職してもらう」ために、様々な支援をすべきです。実際に厚生労働省は未内定者への就職支援などに様々な取組みをしています。しかし、現実に地方の学生が数十万円規模の借金をして就職活動に臨んでいるという費用面の現状をもっと直視すべきなのではないでしょうか。

教育にもコストがかかるように、就職にもコストがかかる。であれば、「奨学金」に相当する以下のような融資制度(仮称「就活奨励金」)を、国が用意してもいいと考えています。

就職活動をする新卒学生は、国から「就職活動奨励金」として50万円程度まで低利子で借り入れることができる。
借り入れ金は、就職(=収入が発生)してから10年程度で分割返済。

これはあくまで融資制度であり、国庫からの新たな負担というものではありません。やろうと思いさえすれば、いつでも開始できる施策だと考えます。雇用保険の基金を活用するのがもっとも簡単でしょう。

(2)就活費用の経費扱いによる、国民年金負担の軽減 

サラリーマンは年間38万円を基礎控除額として課税対象外とされています。企業が支払う通勤費も課税対象外であり、個人事業者であれば交通費は経費扱いとなります。

就職活動における交通費は「経費」そのものです。交通費以外にもセミナー受講費、書籍・資料購入費、スーツ購入など、さまざまな「経費」があります。収入のない学生とはいえ、将来の税金を支払うための活動に対しては、課税上の経費控除の措置がされてもいいはずです。

学生にとっての税金は、「国民年金」です。平成3年から、収入に関係なく20歳以降強制加入となった国民年金は、無収入者への税金ともいえるものです。就職活動における費用を一定金額を上限として経費として認め、「国民年金掛金を一部控除する」というアイデアを提案します。

具体的には、

企業の人事が、受験時と場所を記載した「採用試験受験証」を受験時に学生に発行。学生はその場所までの交通機関発行領収書を用意。
就職セミナー受講では、主催者が就職セミナー受講料の領収書を発行。
リクルートスーツも、リクルートスーツ代として領収書を発行。
これらの領収書を添付し社会保険庁に提出することにより、国民年金掛金を一定割合控除する。

というものです。少なくとも、もっとも経費が認められていないサラリーマンの基礎控除額である38万円程度は、経費扱いを認めるべきだと考えます。

もしも国民年金からの控除という考え方が認められないのであれば、就職後の課税所得から控除する「事後精算」という手法も検討されるべきだと思います。

(3)「支社での採用試験」の行政指導。

本HPで就職活動を支援している「広告業界」は、ほとんどが東京に本社があります。関西など支社がある会社も多くありますが、採用では筆記試験から東京で実施する会社が決して少なくないことが分かっています。広告業界だけでなく、東京に本社がある企業は一般的に東京で集中的に採用試験を実施する傾向にあります。

企業にとっては1事業所で採用試験を実施するのが楽でしょう。しかし、就職活動は社会的なイベントでもあり、学生には収入がないという前提で、企業にも学生側の事情を考えてもらう必要があるでしょう。少なくとも関西、中部、九州など、学生が多い地方に支社がある企業は、できるだけ地元での選考試験を実施するべきだと考えます。また、最終の役員面接を本社で実施する場合は、交通費の全額会社負担をすべきです。

良識のある企業は、すでに上記のことを実践しています。しかし学生にとってはできるだけ多くの数の企業を受験しなければならず、今や企業側の学生への配慮は、行政からの要請や指導を伴ったレベルが求められているといえるでしょう。

本コラムは、あくまで著者の私見です。しかし、このボランティアに3年間も関与するにあたり、新卒学生への経済的支援は絶対かつ早急に必要であると確信しています。今後広告労協内でも議論し、学生団体や大学団体などと話し合いながら、実現の方向性を探っていきたいと考えています。

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2005.05.01

不正で不潔な、内定前健康診断の例。

以下はあるマスコミを受験し、健康診断を受けた後に落選した女子学生からの投書です。これが何らまだ会社と雇用契約のない学生になされている実態です。それ以上にずさんな衛生対策や女性への配慮・プライバシー対策のなさに驚かせられます。

面接は本当に毎回毎回楽しく、和やかでした。面接自体は本当にありがとうございました、って言っちゃうぐらい満足しているんです。他の受験者も面接に関して文句を言っている人はいませんでした。

だけど、健康診断が問題でした。blogも読んでいたので、2次面接前から「微妙だなぁ」と思っていましたが、私は「それでもいい!!」と開き直っていました。

健康診断は社内の診療所でした。当然社員の方が男性も含めてうろうろしています。

健康診断のときに問題だなぁ、不思議だなと感じたことは

1.社員が使う部屋(たぶん気分が悪い人が休むための部屋)に入社していない人の分も含めた健康診断結果が置いてあること。私でも容易にわかるし、容易に見ることができました。今日健康診断だからそこに移動しました、というわけでもなさそうです。

2.正式なやり方はどうなのかわかりませんが、採血のとき、不衛生だと感じたこと。いっしょに受けていた友人も話していました。血はビン3本ほど抜かれました。

3.皆裸足なのに、スリッパが使いまわし。検査着も使いまわし。

4.男性は(たしか)下着のシャツ姿で移動していたこと。たぶんフロアをわけたり、時間も違うようにしてたと思うのですが、1人か2人の受験者に廊下で会いました。
  
女性は、青い検査着を着ます。下は何もつけていない状態です。当然すけてみえそうな状態で廊下を歩きます。男性社員がいる前で。しかも他人の着たあとをそのまま着ます。

5.レントゲンの前に妊娠の可能性も聞かれなかったこと。今までの病歴は面接を待っている間に、用紙に記入するようになっていました

6.(どこの企業でもやるのかもしれませんが)尿検査で肝臓のウロビリノ-ゲン?も調べていました。大学の健康診断ではやらないので、驚きました。肝炎だったら、採用しないってこと??と思ってしまいました。(たしかそういう裁判ありましたよね…)

7.本当になぜやったのか意味がわからないのですが、握力も検査しました。

※検査は身長・体重・握力・視力・聴力・レントゲン・血液検査・尿検査・心電図・問診でした。

以上が私がこの健康診断で不思議に思ったことです。

正直言って、最終面接の前から皆「今から採血か」と不安に思っている人もいたし、人によって面接が先か後か、違うので、トイレを我慢していた人もいました。この健康診断が余計なストレスになっているようにも思います。

私はまずblogを読んでいたので、疑問を持ちながら、本社まで来てるし、採血を今までしたことがなかったので、かなり不安でした。

別なマスコミも最終面接の時に健康診断をするそうですが、そこではガンとか結核とか大病しかチェックしていないと言っていたそうです。でも逆に言ったら、じゃあ病気だったら落とすのか、とも思うし、もし自分がガンでも知らされないままになるのも恐ろしいと思いました。

結果的には落ちてしまったのですが、あの棚に並べてあった診断結果のファイルを見て、「もし内定でも考えなおそうか」と思っていたぐらいなので、これでよかったような気がします(笑)あの棚に自分の結果も並ぶかと思うと、自分のだけ抜きに行きたい気持ちです。面接ではすごく良い印象だったのに、ちょっと裏切られた感じがしました。

■労協への要望■:テレビも新聞社も広告も、最終前に健康診断をしているところが多いようですね。
受験している私たちにはそれを断る勇気もないし、最終まで来ると何が何でもそこに入りたいという気持ちにもなっているし。私はこれからも選考が続くので、また健康診断をやることもたくさんあると思います。でも来年度からこんな余計なストレスを感じながら、最終面接を受けなくてもすむようになればと思って、この情報を報告しようと思いました。

あなたの不愉快な体験についても不適切採用報告からどんどん送ってください。

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