2005.12.11

「40歳までのキャリアプラン」に「結婚・出産」を入れるべきか。

ある広告代理店のエントリーシートで「入社して40歳までに、どのような人生の計画を考えますか?」という課題が課されています。これに関し女子学生から「結婚や出産といったことも書かなければいけないのでしょうか」という相談がありました。

この件について、知り合いの社会保険労務士の先生にヒアリングしたところ、以下のような意見をいただきました。

・この会社は社員のキャリア形成支援に力を入れている。新卒採用にこのような課題を課すのは、その人の価値観やどのようなプロフェッショナリズムを目指すのか、そのためにどんな心構えや計画を持っているかを知りたいのであろう。

・キャリア・プランは2年先くらいまでの近未来、5年先、10年先、ライフ・プランといったスパンで記述するのが一般的。近未来は自己の能力開発などの実行計画を、遠未来は昇進・昇格や結婚・出産などのライフ・イベントをも想定して書くもの。

・一般論でいえばこの設問は職業観や信条、キャリアゴールを問うものであるため、自分の考えを率直に記述すればよいと思われる。ただしこれは建前であって、結婚・出産に対する取り組みは企業や組織のカルチャーによって微妙に異なるのが現実。この会社の福利厚生の方針や施策の具体的な内容なども念頭に置いて記述することが勧められる。

この話からも分かるとおり、キャリアプランというのはプライベートも含めた自分の人生と密接なものだと言えるでしょう。自分の人生の多くの時間を費やす会社がどのようなキャリアプランを支援してくれるかは、会社を選択する、または勤務している側からすればとても重要なことです。

しかし学生のキャリアプランを「選考の材料」にするということはいかがなものでしょうか。

今、日本の抱える諸問題の根源は「少子高齢化」だといえます。子供を2人、3人と持ちながら仕事ができる環境を整えるのが日本の課題であり人気企業の務めです。会社に子供を作ることはできません。企業の社会的責任(CSR)の基本は今や社員の子育て支援にあると言えるのではないでしょうか。

とはいえ、女子学生にとってこの質問では「出産」をどう表現するかが最大の難関です。果たして2人まして3人子供を持つと、このエントリーシートに書くことができるでしょうか。1人が限界の社会では少子は進行するばかりです。また男子学生が「育児休暇をとる」と書けるでしょうか。

人生は自由であり、結婚も出産も計画的にはいきません。その時々に人生の転機があります。個人的な意見ですが、会社が「選考の材料」としてキャリアプランを書かせるのは、その企業が出産・育児に関して男女の区別なく全面的な支援の姿勢をもっている場合に限るべきだと考えます。出産・育児への対応について事前に学生へ十分な説明がなされない中でこのような設問があるとすれば、それは不適切なものだといわざるを得ません。

この会社で育児支援に関する事前説明があったかは分かりませんが、社会保険労務士の先生の指摘にあるとおりこの会社はキャリア形成支援に力を入れている企業であり信頼できると思われます。今回のケースに限っていえば堂々と自分の考えを書くことが大事であり、入社後にそれをきちんと履行してもらうようにしましょう。

しかし子育て支援の姿勢がない会社がこのような質問を出せば、当落を決める材料にする恐れがあります。上記社労士の指摘の通り、その会社の福利厚生の方針や具体的な内容をきちんと調べることが重要です。

※この課題に取り組むには、山本直人氏(元博報堂人事ディレクター)の「グッドキャリア キャリアがブランドになる時」が参考になると思います。ぜひご一読を。

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2005.11.05

「まず、名乗る」のは学生だけか。

採用する立場から求職者と面接をすると、うっかり先方の話ばっかり聞いてしまうことがあります。しかし求職者の方はあくまで興味のある会社の一つとして考えているわけであり、その会社に行くことを決めて面接しているかどうかの保証はありません。

ましてや求人側が新設のベンチャー企業であれば、求職者は出資構成やベンチャーということ以外の情報を知る由もありません。新設企業が取引先に会社概要から説明するのと同様、求人側も求職側に自社の説明をするのは当然のことだといえるでしょう。私も自社のこと・経営方針・目標・共有してもらいたい価値観をきちんと説明し、お互い理解を深めた上で双方が雇用契約書にサインする/しないを決めようと努めています。

これまで多くの広告業界の新卒採用過程を見てきましたが、企業側から学生側に自社の説明をする機会を持っているところは少ないと思っています。特に中堅の総合広告代理店に顕著でしょう。これらの広告代理店を辞退しベンチャー企業に行く学生は多数いますが、それはただのイメージの優劣ではなく、ベンチャー企業の方がきちんと学生にプレゼンし、その価値観に学生側もきちんと共鳴したからなのではないでしょうか。

企業が学生に資質と仕事への熱意を求めるのと同様に、学生も企業に可能性と採用への熱意を求めています。学生だけに名乗らせ、自社の判断で内定を出す出さないだけが主要な採用活動と考えている企業に、いい人材が集まるはずはありません。

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2005.10.15

取り違えていませんか、「OB/OG」の意味。

募集要項で、「OB/OGの紹介は実施していません。各大学の就職課でお調べください。会社説明会も実施いたしません。」としている会社は結構あります。

しかし学生にとってのOB/OG訪問はその会社のことを研究することに他ならず、学校の先輩と旧交を温めるためではありません。すなわち就活におけるOB/OGの定義は「その会社の現役社員」そのものであり、出身大学はどこでもいいわけです。

もともとOB/OG訪問という言葉は、様々な大学で新卒採用実績のある大企業への就職にしか当てはまりません。比較的小さい規模の会社の募集要項に「OB/OGの紹介も会社説明会もない」と書けば、OB/OGのいない学生には「当社は社員による説明も、会社による説明もするつもりがありません」と映っているのではないでしょうか。逆に見れば、「新卒採用実績のある大学以外はフォローしません」とも受け取れます。

そもそも広告業界は黒子の役割であるため、具体的にどんな広告に携わっているのか、主要取引先はどこかなどはHP情報からも分からない場合が多いでしょう。実際に働いている社員に多少でも会っておかなければ、その会社のことは何も分からないといっても過言ではありません。このような会社が、採用面接で「なぜ当社なのか」「どんな部署を志望しているか」、ましてや「誰か社員には会ったのか」といった質問をするのはもはや悪い冗談とも言えます。

とはいえ実際に受け付けたら、大量の学生の問い合わせをさばききれない・説明会の会場を確保できないと思う採用側の気持ちも分かります。しかし様々な学生を見てきた経験から言えば、何も書かなければOB/OG紹介の問い合わせが殺到するということも(超有名・超人気企業でない限り)ありえないと思っています。もちろん安易に社員を紹介すると書けば殺到するでしょうが、「何も書かない」という方法もあるはずです。

自らOB/OG紹介の問い合わせをしてくる学生は、他の学生よりはるかに行動的で、より大きな関心を寄せている人物です。リクナビをはじめとしたネットでの就職活動が全盛となっている現在、自ら電話をして企業にアクセスし交渉するというだけで、基本的な行動力とコミュニケーション力を持っていると推定できるのではないでしょうか。

新卒での採用実績大学数が少ない会社は、OB/OG訪問の門戸を閉じてしまわないことで、いい人材を早期に発掘することができると思います。採用人数が若干名というのであればなおさらでしょう。採用担当の方には、OB/OGの固定観念にこだわらず熱心な学生のニーズに応え、第一線の社員の時間を割いてもらい会っていただければと思います。

会社説明会も、最初の筆記やエントリーシート選考直後に開催するなど、現実的な人数を対象に実施するアイデアはあるはずです。また第一回広告労協就職フォーラムや今年度読売エージェンシーの会社説明会が実施された「シニアワーク東京(飯田橋)」の地下大会議室は、250名程度を集めることができ、プレゼン設備も充実した施設です。就職説明会という目的であればホテルの会議室より格安に実施できると思います。ぜひ検討してみてください。

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2005.07.16

「不合格棟」。

「書き間違え」「誤植」という言葉は、IT時代には「変換ミス」という新しい形になりました。過去にも指摘した「適正試験」や「一時面接」はその代表的な例です。

これに関連し以前学生の方から次のような報告をいただきました。

先日某IT会社の人事から不合格の手紙が来たのですが、
私の住所   「*-** 棟***号室」なのですが
表紙の住所には「*-** 不合格棟***号室」と記載されていて腹が立ちました。かなり失礼だと思うのですが、何かのミスでしょうか?

このPCで「C」という文字を入れると「不合格」と変換する設定をしていたのでしょう。この会社ではC評価が不合格を示すようです。

人事が落選者に送るメールで起きた人為的変換ミス。ここまでくると会社としての管理問題といえるでしょう。郵便配達の人にも見られている表書きの住所で「不合格」とは…。

この会社では「C」という文字を不合格評価だけにしか使わないのでしょうか。どこかの電鉄会社ではありませんが、合理性を追求する一方、フェイルセーフの観点が欠けていたのかもしれません。間違って「不合格」と変換されたものが一番送られてはいけない対象がどこか、そのイマジネーションさえがあれば、このように学生が傷つかずに済んだでしょう。

消費者へのメールだとしたらとんでもない事件に発展しているでしょう。それでもだまっている学生という立場の弱さを痛感せざるを得ません。

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2005.07.01

早くなる役員面接の結果通知。

7月4日の週は、広告業界新卒選考の最終面接がラッシュとなります。

7/2(土)ピラミッドフィルム役員面接
7/4(月)読売広告社最終面接/ADEX最終面接/フロンテッジ最終面接
7/5(火)読売広告社最終面接/毎日広告社最終面接/TOMOE役員面接
7/6(水)日経社役員面接/ADEX最終面接/電通ヤングアンドルビカム役員面接
7/9(土)、10(日)東北新社役員面接

広告労協Fさんの各社アドバイスや面接対策会にはここではとても言えないほど多数の応募があり、複数の会社の最終に臨む学生も少なくありません。

この最終面接の状況を見て、広告労協Fさんは「もしかしたら内定通知が早くなるかもしれない」と言っていました。もはや広告業界の採用担当者が広告労協の選考スケジュールを見ていないはずはありませんし、学生も複数社残っている可能性を知っています。気の利いた採用担当者なら他社から内定がでる前に早々に内定を出し囲い込みをするはずとFさんは分析します。さすがFさん、という指摘です。私が採用担当ならそうします。

面接の記憶など長く残るものではなく、役員の日程調整の困難さから言っても、役員面接後に日をあらためて役員が集まり合否決定会議をするということはまずありません。面接の場での点数の集計か合議で決めているに違いありません。採用担当者の手元にはその日のうちに結果が出ているはずです。その後いろいろな社内手続きがあろうとも、遅くとも翌日に内定(または健康診断を前提とした内々定)を出すことは可能です。

これだけかぶって受験する学生が多いと、内定を早く出すことは極めて重要です。志望度が高い会社から早く内定が出ると、その後の採用を辞退することもあるでしょう。そうでなくても早く内定通知は学生にとってありがたいことに変わりません。2社から声がかかったとしても、早々から見込んでくれた採用担当を信頼して進路を決めるということは珍しいことではないでしょう。

しかし残っているのが1社だけという必死の学生の方が多数派です。限られた採用枠がなるべく多くの学生に割り当てられればと願って止みません。そのためにも、少しでも早めに内定の連絡をしていただけるよう採用担当者の方にお願い申し上げます。

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2005.06.20

親の職業を聞き、笑う人事。

ある学生から、中小の代理店を受けた際のレポートが来ました。

二次面接で、社長を初め、会長、人事部長など5人の面接官がおり、学生は、4名でした。まず初めの質問は、通過の連絡を聞いたときどう思ったか。ここにくるまでどういう気持ちで来たか。次に、いきなり家族構成と、父親の職業を聞いてきました。

先輩の活動報告書にも書いてあったのでやっぱり聞かれたか・・・と思いつつ、答えました。現在私の父は病気で療養中だと答えたところ、え?前には仕事してたんでしょ?どんな仕事?と詰め寄られました。次の子は父親が建設会社の支店長をしているらしく人事が冗談で「毎日談合に忙しいんですか?」って言われていました。そこはみんな笑っていました。

私は結局落ちました。正直この会社に落ちてよかったです。

このことを友達に言ったら普通はそういうの今聞いてはいけないし、もし聞かれたら前の仕事言えばいいんだよ。と言われました。
分かっていても、その学生に対する判断基準の一部として親の職業があり、合否を左右してしまうのかと思うと、哀しくなり、投稿いたしました。
毎日通りすがりさんのブログを読ませて頂いていたので、こういう風に聞いてくること自体が普通ではないんだと改めて感じています。長々と失礼いたしました。

このようなことが横行すればするほど、広告という業界にネガティブイメージを持った学生が世の中に出て行きます。前回の私の「家族の最終学歴や勤務先・役職を書かせる会社。」でいただいたコメントにあるよう、まさにこの会社は「恥を知れ」といえるでしょう。

不適切採用情報提供フォームはこちらです。不愉快な思いをさせられ、しかも落とされた会社に何も配慮する必要はありません。事例を共有するためにもどんどん送ってください。

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2005.06.16

家族の最終学歴や勤務先・役職を書かせる会社。

ある交通広告に強い広告代理店に関して、最近以下のような報告がありました

また最終面接の前に家族状況を書かせる欄があり、家族の最終学歴や勤務先・役職を書かせるところまであります。
「記載内容に合否に影響が出ることはございません」とのことですが、ならばなぜ書かせるのか疑問が残ります。
「可能な範囲でご記入ください」ともあるのですが、最終面接まで進んでいることもあり、すべて記入しないわけには行きません。
そんなに古い体質が残っている会社なのか、と。

この会社ではエントリーシート記入の際も、「自己の主義・生活信条」や「愛読書」、「尊敬する人とその理由」という項目があったようです。これらについては、「採用試験で「尊敬する人物」を聞くこと。」というコラムでも指摘したとおり、公正な選考採用をする上で好ましくないこととされています。ましてや家族の最終学歴や勤務先・役職の詳細を「内定前に」聞くことは、「母子家庭は採用でマイナスになるか。」で書いたように、人権上も採用上も極めて大きな問題だといわざるを得ません。

この会社は以前より同様の採用を繰り返しています。このような人権軽視の傾向のある会社は、社長が老齢かつワンマンで、採用にも大きな影響力を与えている場合が極めて多いようです。人事という仕事は採用だけでなく人権啓発も重要な職務であり、このようなことは問題があることは分かっているはずです。しかしそれでも上申できないのは、社長の意向が大きいということしか考えられません(内定前の健康診断問題もこの傾向が見られます)。

広告労協では「不適切採用情報提供フォーム」を開設し、人権軽視の採用に関しての情報を集めています。春の採用シーズンが終わり次第、具体的な改善策の検討に入る予定です。

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2005.06.04

役員面接では交通費を出してあげてください。


(2004年5月13日に発表したものを再掲載。)

採用担当の方に謹んで提言いたします。地方学生のために、自身の会社のために、役員面接ではぜひ交通費を出してあげてください。

●地方学生が最終面接で落ちるということ。

広告労協の調査では、04年関東圏外の広告業界内定者の平均就職活動費用は平均で約20万円、最頻値は30万円台、最大は70万円台(北陸地方)という数字になっています。しかもこれは内定のある学生のみの統計であり、夢破れた学生の数字はもっと悲惨なものに違いありません。

地方学生が試験に臨むということは、費用だけでなく移動時間もかけているということです。また役員面接は一般に平日に行われることが多く、授業も出席せずに面接を受けている可能性が高いといえます。

役員面接で交通費が出ない会社は、間違いなくそれまですべての選考課程でも交通費を出していません。すなわち地方学生にとって最終で落ちるということは、それまでの費用と時間、そして受けるべきだった授業のすべてが無駄になるということです。

●落選学生は「会社憎んで、人事憎まず。」

地方学生が最終で落選したとき会社をどう思うか、役員の方はご存じでしょうか。彼らはみな「そんなことなら早く落としておいてくれ!」と悲痛な叫びをあげています。話を聞けばたいてい「役員面接でも交通費を出さなかったセコい会社でした」と愚痴をこぼします。そして空虚さの中で「役員」に悪印象を持って他の会社に行きます。最終に残るほどの学生ですから、多くは優秀な成績でクライアント企業に就職していくのでしょう。

しかし私の知る限り、採用担当を悪くいう学生は皆無です。役員面接まで残った学生は採用当局に対して自分を評価してくれたことに多大な感謝をしています。そして役員面接で一定数を落とさなければいけない事情を、学生自身も実感値として理解していると思います(「役員=お父さん、人事=お母さん」論を参照)

●本人に区切りを付けさせるためにも、役員面接での交通費支給を。

地方学生が役員面談で不採用になるショックは、それまでの過程が長く費用がかかるほど大きなものになります。本人にきちんと区切りをつけさせ、風評などネガティブなベクトルに向かわせないために、せめて費用面で多少の配慮をするべきだと考えます。

もちろん早い段階から交通費を負担することは、過剰なコストがかかるだけでなく、そのことで地方学生が不利になる恐れも否定できません。しかしせめて最終役員面接だけでも「会社の誠意として」交通費を支払うことは可能なのではないでしょうか

相手はそもそも無職の学生、そして対応如何では将来貴社のファンにも敵にもなりえる若者です。これは一種の企業リスク対策です。とはいえ、お願いしたいのは高々役員面接での交通費支給ということだけです。なにとぞご配慮いただければと思います。

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2005.05.29

地方就活生の負担軽減のために、何をすべきか。

広告労協の活動が始まって以来、多くの広告業界の採用で地方支社での試験が行われ、最終面接では交通費を支給するようになってきました。しかし、残念なことに今年から1次試験を全員東京本社に集めて実施している中堅広告会社があります。関西に支社があるにもかかわらずに、です。

自分は経費で出張できるのもかかわらず学生を東京に呼びつけ、バイトも授業も放棄して自腹で上京する学生のことを考えると怒りすら覚えます。この会社の関西支社社員には学生を見る目がないのでしょうか。

このような状況が今後変わっていくことを、いや変えていかなければいけないということを念頭に、2003年8月11日に発表したコラムを再編集したものを以下に掲載します。



(1)内定ありなしにかかわらず、数十万円かかる、就職活動。

今地方の学生が、就職活動にいくらお金を費やしているか、国会議員や行政は知っているのでしょうか。

地方の学生は、筆記を受けるためだけに夜行バスや学割新幹線・飛行機で上京し、採用担当と会話を交わすこともなく帰っていきます。面接試験に勝ち残る学生は、1次、2次と自腹で上京しますが、最終の役員面接で「地方から出てきたら親御さんが心配するだろう」といった理由で落とされることがあります。そのような学生は「そんな理由で落とすなら、最初から落としておいてくれ!」と悲鳴をあげています。このように、地方受験生の「最終落ち」の無力感は、それまでにかかった交通費、移動時間、出席できなかった講義のことを考えると、私たち社会人はもとより、在京学生にすら想像を絶するものになっています。

地方の受験生の就職活動への全面的な交通費会社負担はほとんど実施されていません。役員面接ですら交通費を出さない会社があります。もちろんこれは一概に否定すべきものではありません。例えば受験生の交通費の会社全負担が義務付けられるようなことがあれば、採用の過程で地方出身者が冷遇される恐れがあるでしょう。

しかし、今の学生には、少なくとも私が就職活動をしていた時代と違い、以下の点で大いに苦しんでいます。

地元での採用数が減っており、必然的に東京の企業も受験せざるをえない。
就職活動の早期化・長期化により、アルバイトも十分にできない。
不況により親の収入が減り、授業料の自己負担の割合も高い。
在学中から国民年金の支払い義務が発生している。

このような背景を考慮すれば、広告業界「内定者」でも平均交通費が地方学生で20万円を超え、50万円かかったという回答も少なくないというのは、極めて不幸な状況です(労協登録生04年入社での調査)。ましてや内定のない学生が大半であり、広告業界を目指した交通費は無駄になっていることを思うと、すでにこれは一つの社会問題と定義すべきものだといえるでしょう。

(2)就活生のための、3つの政策提案。

(1)「就活奨励金」制度

勤労者は失業時には雇用保険で収入を得、次の就職に向けて準備することができます。しかし、学生はどうでしょう。まだ税金や雇用保険を納めていないから、就職についての行政上の支援を受けられないというのでしょうか。

就職活動は、「将来税金を支払うための活動」といえます。教育を受けた将来のある若者がきちんと就職をし、税金を支払う環境を整えるのは、税収、年金、果ては社会の安定・発展にまで直結する日本の一大課題です。そのために国家・行政は、学生に「就職してもらう」ために、様々な支援をすべきです。実際に厚生労働省は未内定者への就職支援などに様々な取組みをしています。しかし、現実に地方の学生が数十万円規模の借金をして就職活動に臨んでいるという費用面の現状をもっと直視すべきなのではないでしょうか。

教育にもコストがかかるように、就職にもコストがかかる。であれば、「奨学金」に相当する以下のような融資制度(仮称「就活奨励金」)を、国が用意してもいいと考えています。

就職活動をする新卒学生は、国から「就職活動奨励金」として50万円程度まで低利子で借り入れることができる。
借り入れ金は、就職(=収入が発生)してから10年程度で分割返済。

これはあくまで融資制度であり、国庫からの新たな負担というものではありません。やろうと思いさえすれば、いつでも開始できる施策だと考えます。雇用保険の基金を活用するのがもっとも簡単でしょう。

(2)就活費用の経費扱いによる、国民年金負担の軽減 

サラリーマンは年間38万円を基礎控除額として課税対象外とされています。企業が支払う通勤費も課税対象外であり、個人事業者であれば交通費は経費扱いとなります。

就職活動における交通費は「経費」そのものです。交通費以外にもセミナー受講費、書籍・資料購入費、スーツ購入など、さまざまな「経費」があります。収入のない学生とはいえ、将来の税金を支払うための活動に対しては、課税上の経費控除の措置がされてもいいはずです。

学生にとっての税金は、「国民年金」です。平成3年から、収入に関係なく20歳以降強制加入となった国民年金は、無収入者への税金ともいえるものです。就職活動における費用を一定金額を上限として経費として認め、「国民年金掛金を一部控除する」というアイデアを提案します。

具体的には、

企業の人事が、受験時と場所を記載した「採用試験受験証」を受験時に学生に発行。学生はその場所までの交通機関発行領収書を用意。
就職セミナー受講では、主催者が就職セミナー受講料の領収書を発行。
リクルートスーツも、リクルートスーツ代として領収書を発行。
これらの領収書を添付し社会保険庁に提出することにより、国民年金掛金を一定割合控除する。

というものです。少なくとも、もっとも経費が認められていないサラリーマンの基礎控除額である38万円程度は、経費扱いを認めるべきだと考えます。

もしも国民年金からの控除という考え方が認められないのであれば、就職後の課税所得から控除する「事後精算」という手法も検討されるべきだと思います。

(3)「支社での採用試験」の行政指導。

本HPで就職活動を支援している「広告業界」は、ほとんどが東京に本社があります。関西など支社がある会社も多くありますが、採用では筆記試験から東京で実施する会社が決して少なくないことが分かっています。広告業界だけでなく、東京に本社がある企業は一般的に東京で集中的に採用試験を実施する傾向にあります。

企業にとっては1事業所で採用試験を実施するのが楽でしょう。しかし、就職活動は社会的なイベントでもあり、学生には収入がないという前提で、企業にも学生側の事情を考えてもらう必要があるでしょう。少なくとも関西、中部、九州など、学生が多い地方に支社がある企業は、できるだけ地元での選考試験を実施するべきだと考えます。また、最終の役員面接を本社で実施する場合は、交通費の全額会社負担をすべきです。

良識のある企業は、すでに上記のことを実践しています。しかし学生にとってはできるだけ多くの数の企業を受験しなければならず、今や企業側の学生への配慮は、行政からの要請や指導を伴ったレベルが求められているといえるでしょう。

本コラムは、あくまで著者の私見です。しかし、このボランティアに3年間も関与するにあたり、新卒学生への経済的支援は絶対かつ早急に必要であると確信しています。今後広告労協内でも議論し、学生団体や大学団体などと話し合いながら、実現の方向性を探っていきたいと考えています。

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2005.05.01

不正で不潔な、内定前健康診断の例。

以下はあるマスコミを受験し、健康診断を受けた後に落選した女子学生からの投書です。これが何らまだ会社と雇用契約のない学生になされている実態です。それ以上にずさんな衛生対策や女性への配慮・プライバシー対策のなさに驚かせられます。

面接は本当に毎回毎回楽しく、和やかでした。面接自体は本当にありがとうございました、って言っちゃうぐらい満足しているんです。他の受験者も面接に関して文句を言っている人はいませんでした。

だけど、健康診断が問題でした。blogも読んでいたので、2次面接前から「微妙だなぁ」と思っていましたが、私は「それでもいい!!」と開き直っていました。

健康診断は社内の診療所でした。当然社員の方が男性も含めてうろうろしています。

健康診断のときに問題だなぁ、不思議だなと感じたことは

1.社員が使う部屋(たぶん気分が悪い人が休むための部屋)に入社していない人の分も含めた健康診断結果が置いてあること。私でも容易にわかるし、容易に見ることができました。今日健康診断だからそこに移動しました、というわけでもなさそうです。

2.正式なやり方はどうなのかわかりませんが、採血のとき、不衛生だと感じたこと。いっしょに受けていた友人も話していました。血はビン3本ほど抜かれました。

3.皆裸足なのに、スリッパが使いまわし。検査着も使いまわし。

4.男性は(たしか)下着のシャツ姿で移動していたこと。たぶんフロアをわけたり、時間も違うようにしてたと思うのですが、1人か2人の受験者に廊下で会いました。
  
女性は、青い検査着を着ます。下は何もつけていない状態です。当然すけてみえそうな状態で廊下を歩きます。男性社員がいる前で。しかも他人の着たあとをそのまま着ます。

5.レントゲンの前に妊娠の可能性も聞かれなかったこと。今までの病歴は面接を待っている間に、用紙に記入するようになっていました

6.(どこの企業でもやるのかもしれませんが)尿検査で肝臓のウロビリノ-ゲン?も調べていました。大学の健康診断ではやらないので、驚きました。肝炎だったら、採用しないってこと??と思ってしまいました。(たしかそういう裁判ありましたよね…)

7.本当になぜやったのか意味がわからないのですが、握力も検査しました。

※検査は身長・体重・握力・視力・聴力・レントゲン・血液検査・尿検査・心電図・問診でした。

以上が私がこの健康診断で不思議に思ったことです。

正直言って、最終面接の前から皆「今から採血か」と不安に思っている人もいたし、人によって面接が先か後か、違うので、トイレを我慢していた人もいました。この健康診断が余計なストレスになっているようにも思います。

私はまずblogを読んでいたので、疑問を持ちながら、本社まで来てるし、採血を今までしたことがなかったので、かなり不安でした。

別なマスコミも最終面接の時に健康診断をするそうですが、そこではガンとか結核とか大病しかチェックしていないと言っていたそうです。でも逆に言ったら、じゃあ病気だったら落とすのか、とも思うし、もし自分がガンでも知らされないままになるのも恐ろしいと思いました。

結果的には落ちてしまったのですが、あの棚に並べてあった診断結果のファイルを見て、「もし内定でも考えなおそうか」と思っていたぐらいなので、これでよかったような気がします(笑)あの棚に自分の結果も並ぶかと思うと、自分のだけ抜きに行きたい気持ちです。面接ではすごく良い印象だったのに、ちょっと裏切られた感じがしました。

■労協への要望■:テレビも新聞社も広告も、最終前に健康診断をしているところが多いようですね。
受験している私たちにはそれを断る勇気もないし、最終まで来ると何が何でもそこに入りたいという気持ちにもなっているし。私はこれからも選考が続くので、また健康診断をやることもたくさんあると思います。でも来年度からこんな余計なストレスを感じながら、最終面接を受けなくてもすむようになればと思って、この情報を報告しようと思いました。

あなたの不愉快な体験についても不適切採用報告からどんどん送ってください。

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2005.04.30

縦割り行政。

内定前の健康診断問題に取り組んで2年になりますが、この問題が解決しない理由は「厚生労働行政の縦割り」にあると確信しています。

今回「医療事業所」側の問題に切り込んでいくため、4月18日に実際に内定前健信を受託しているクリニックに電話してみました。「***さんの健康診断を受ける予定の学生なのですが…。」と切り出すと、電話に出た事務の女性は「あ、入社時健診ですね。」という言葉を使っていました。そこで「特に会社からは言われていないのですが、健康診断を受けるということは、入社を前提としているんですよね…。」と聞いてみたところ、「そういうことは会社に聞いてください。」の一点張りでした。様子からしてこのクリニックはこの健康診断が労働安全規則第43条に基づくものではないことを知っているようでした。

そこで今度はそのクリニックを所轄・指導する保健所に電話をし、今度は「うちの息子が内定もらわない間に健康診断を受けろと言われているが、つい最近も別な会社で内定前に健康診断を受けさせられた。そもそも43条の範囲外の健康診断が行われていることに、保健所はクリニックや会社の指導はしてもらえないのか」と話しました。すると「それは会社側の問題ですね」とあっさり言われました。

仕方なく今度は組合の名前で東京労働局に相談したところ、親身になって対応はしていただきましたが「会社の指導はできるが、医師の指導はできない」と言われています。そこで「では厚生労働行政として、医師側に指導する部署はどこか」と聞くと、調べた上で上記管轄保健所の名前が上がりました。これで無限ループの完成です。

我慢できず私は知り合いの厚生労働省の医療行政の指導官に聞いたところ、「厚生労働行政といっても、相互には何もつながりがない」とはっきり言われました。また43条は労働安全規則であるため、企業(事業者)に対する定めということもあり、医療事業所に対する法律ではないという解釈のようでした。

結局この問題の根源は、43条の根拠でないのに43条を装った「会社のウソの申告」によって健康診断業務が行われている点だと言えそうです。しかし、より多くの健康診断を請け負った方が儲かるという理由で黙認しているクリニックの存在も否定できません。

このような縦割り行政の中では、この問題については労働局から企業側への個別対応でしか解決できないようです。根本解決には医療倫理と個人情報保護の観点から医療事業者の自覚を促すことと、労働安全規則上に内定前健康診断禁止を明文化することが必要です。

広告労協だろうが私個人であろうが第三者には違いなく、企業や医療事業者から当事者資格に欠けると言われる可能性もあるでしょう。それを後押しするのは「おかしい」と思っている学生の声です。「不適切採用情報提供」からあなたの体験をお聞かせください。

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2005.04.20

内定前健康診断の「傷害罪」的考察。

2005年4月19日、東京労働局職業安定部職業安定課人権啓発担当の方に直接連絡をし、内定前の健康診断問題について話をしたところ、以下の見解をいただきました。

●労働安全管理規則第43条「雇入時の健康診断」は、採用が決定しているものを対象としているものであり、採用が決まっていない人を対象とするものではない。
●内定通知前にそのようなことが実施されているとすれば、実施している会社を教えてもらえれば是正の指導をする。

私は失礼ながら「それは行政としての見解ですよね」と確認し「そのとおりです」と答えていただいています。さらに「では何を根拠に健康診断を実施しているんでしょうね」と聞くと「さあ…。人権上も問題ですよね。」とおっしゃっていました。これで企業が内定前の学生に健康診断をすることには法律的な根拠が何もないことがはっきりしました。

そこで一つ新たな疑念が浮かびました。本来人の体に針を刺すのは傷害罪に該当するものですが、医療上の行為に限って罪を免れます。しかし法律の根拠のない依頼に基づいて医療機関が人に針を刺し、体にエックス線を照射することは、医療上の行為として傷害罪を免れることができるのでしょうか

例えば人の髪を切ることも本人の同意がなければ傷害罪に相当する行為です。内定前に健康診断を強いるのは、いわば髪を短くすると校則で決まっている学校の入試で、合否を出す前に学校が床屋を指定して受験者に髪を切らせることと同じです。どのような理由があれ落選者という当事者から見れば圧倒的に立場の強いものの横暴と断じざるを得ません。

医療機関は会社の説明に基づき受託しているだけです。検査対象が43条の対象外の学生であることを知っていたら、受託できるはずがありません。したがって学生に針を刺す行為はもっぱら会社に責任があると言えます。「その時点では知られる必要のない」個人情報を取得されるために、無駄に針を刺され無駄にエックス線を浴び、結果も不採用だったときの肉体的精神的ダメージは確実に立証できるはずです。女性であればエックス線を受ける前に妊娠している可能性の質問にも答えなければいけません。証拠も揃えやすく、法律家にとって興味ある案件なのではないでしょうか。

しかし私は法律家ではありません。私のこの問題への結論は1つです。「健康診断した人を全員採用すること」、これで何ら問題はありません。

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2005.04.16

健康診断する病院で、自分の内々定を確認してください。

2日間連続で発表している「採用過程での健康診断問題」ですが、診断を実施する医師や医療機関側に問題はないのでしょうか。

健康診断は労働安全管理規則にあるとおり会社が責任をもって行うことですから、その費用は全額会社が負担します。したがって病院は会社との間で目的をはっきりさせた上で契約し、受験者の健康診断を受託します。少なくとも採血したりレントゲン写真をとったりすることは「医療行為」には違いありません。健康診断というデリケートな行為を第三者との契約で行うことは極めて例外的なことです。病院にとってはそれが適法な依頼であり、目的外使用がないことを慎重に確認して請け負っているはずです。

医師が会社からの依頼で健康管理する対象は、労働安全管理規則に則り会社と本人が就業を合意している人(従業員および従業員になることが内定(内々定)している人)に限ります。会社も内定を出しておらず、学生も内定承諾書に押印していない中での健康診断は、医師として明らかに排除すべき行為です。

労働安全管理規則の条項には直接的な会社への罰則規定がないため、「やっちゃえやっちゃえ、学生は文句言わないだろう」という会社があっても不思議ではありません。しかし医師は同意しない人への医療行為は明確に禁じられており、違反すれば医師法上の罰則があるはずです。通常のインフォームドコンセントと同様、医師には健康診断する理由の説明と本人の同意の確認の義務があると考えます。血液型を実際に調べないで輸血することはないように、少なくとも内定承諾書の署名捺印を確認してから医療行為を行うべきです。

会社の中に健康診断設備があるところは稀ですので、たいていは外部のクリニックにいくことになります。いずれにせよ医師や看護士は職業柄余計なことを会社には伝えませんので、安心して医師や看護士または病院に直接「健康診断してるってことはすでに私は内々定ってことですよね。健康だったら採用するってことですよね。」と確認してみてください

きっと「そうだと聞いてますよ」と言ってくれる「はず」です。

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2005.04.15

採用時の健康診断と、個人情報保護法。

いくつかの会社で最終選考の局面となってきました。残っている学生の健闘を心より願っています。

過去「健康診断するということは、内定したということ。」というコラムでその問題点を指摘してきました。しかしいまだに選考の途中段階で健康診断を実施する会社が存在するようです。

「内定」とは「解約権留保付労働契約」のことであり、特別な事情がない限り採用を約束するものです(この意味で「内々定」という言葉と事実上同義です)。この「特別の事情」に「健康上の理由」が含まれます。そのままでは明らかに就労に耐えることのできない容態であり、その後の治療の甲斐も見られないような時は、使用者としての安全配慮義務が果たせない恐れがあります。このような場合は採用を取り消すことは問題ありません。特に広告業界は激務ですので、個人的な意見からも就職せずにまず体を治すことが第一だと思います。

しかし健康診断の結果というものは、究極の個人情報です。2005年4月1日に全面施行された個人情報保護法の定めでは、個人情報の収集においては目的をはっきり明示させなければいけません。以下条文を転載します。

個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号) 第四章 個人情報取扱事業者の義務等 第一節 個人情報取扱事業者の義務

 (利用目的の特定)
第十五条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。
2 個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。

 (利用目的による制限)
第十六条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。
(中略)

 (取得に際しての利用目的の通知等)
第十八条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。
(後略)

労働安全衛生規則第四十三条の定めにより、就業させるのであれば健康診断を受診させ業務に耐えられるか確かめなければいけません。したがって健康診断をする目的を「内定(内々定でも同じ)を前提に行う」とはっきり説明されていれば全く問題ありません。しかし選考課程途中にある健康診断は、昨年までの例ではその情報の取得目的が極めて不明瞭なものがほとんどでした。

健康診断を選考の材料にすることは上記コラムでも述べたように就職差別の原因になりえると厚生労働省が認めています。個人情報保護法のポリシーはコンプライアンス(法令遵守)活動の証として一般に公開し、収集する対象に説明するものですので、その目的が行政通達に反するものであるはずがありません。

この度面接と健康診断を同じ週に行う会社があるようですが、実際に会社が学生へどのように説明するか注目しています。個人情報保護法施行直後ということもあり、きっと健康診断の前に「選考の結果、内定(内々定)を出します。このため健康診断を受けてもらいます」という説明があるはずです。

面倒なことにならないためにも、体調を整えて健康診断に臨みましょうね。

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2005.04.14

健康診断するということは、内定したということ。

2003年6月24日、2年近く前に発表したコラムの再掲載です。



会社が選考の時に実施する健康診断について、色々調べたところ、「健康診断するということは、内定したということ。」という結論に至りました。

(1)採用時に健康診断をする根拠

新卒採用に限らず、企業が雇用する際の健康診断の実施根拠は、以下の「労働安全衛生規則」にあります。

労働安全衛生規則(昭和四十七年九月三十日労働省令第三十二号)
第四十三条(雇入時の健康診断)
 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。
  • 既往歴及び業務歴の調査

  • 自覚症状及び他覚症状の有無の検査

  • 身長、体重、視力及び聴力(千ヘルツ及び四千ヘルツの音に係る聴力をいう。次条第一項第三号において同じ。)の検査

  • 胸部エックス線検査

  • 血圧の測定

  • 血色素量及び赤血球数の検査(次条第一項第六号において「貧血検査」という。)

  • 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査(次条第一項第七号において「肝機能検査」という。)

  • 血清総コレステロール、高比重リポ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査(次条第一項第八号において「血中脂質検査」という。)

  • 血糖検査

  • 尿中の糖及び蛋白の有無の検査(次条第一項第十号において「尿検査」という。)

  • 心電図検査


  • (2)規則の濫用、曲解に対する労働省の事務連絡

    しかし、この規則を根拠に、「健康診断の結果で採用判断をする」という企業が続出したため、平成5年に以下の労働省連絡が各都道府県職安課長に通達されました。(以下強調文字は筆者によるもの。)

    ●「採用選考時の健康診断について」
    平成5年5月10日付け事務連絡
    労働省職業安定局業務調整課長補佐及び雇用促進室長補佐から各都道府県職業安定主管課長あて

     近年、新規学校卒業者の採用選考時に、事業主が労働安全衛生規則第43条(雇入時の健康診断)を根拠としていわゆる「血液検査」等の健康診断を一律に実施し、公正な採用選考の観点から問題となっている事例が見受けられるところである。

     しかしながら、同規則は採用選考時の健康診断について規定したものではなく、また、「雇入時の健康診断」は、常時使用する労働者を雇入れた際における適性配置、入職後の健康管理に資するための健康診断であることから、採用選考時に同規則を根拠として採用可否決定のための健康診断を実施することは適切さを欠くものである。

     また、健康診断の必要性を慎重に検討することなく、採用選考時に健康診断を実施することは、応募者の適性と能力を判断する上で必要のない事項を把握する可能性があり、結果として、就職差別につながるおそれがあるところである。

     このため、採用選考時の健康診断の実施については、従来より必要に応じて指導を行ってきたところであるが、今般、労働基準局安全衛生部労働衛生課長から各都道府県労働基準局労働衛生主務課長に対し「雇入時の健康診断」の趣旨の徹底について別紙のとおり通知した旨連絡があったので、各都道府県においても、下記の文例を新規学校卒業者向けの求人説明会の配付資料に盛り込む等、事業主に対して「雇入時の健康診断」の趣旨を十分徹底し、応募者の適性と能力のみに基づく公正な採用選考を行うよう指導されたい。

    近年、新規学校卒業者の採用選考時に、労働安全衛生規則第43条に「雇入時の健康診断」が規定されていることを理由に、いわゆる「血液検査」等の健康診断を一律に実施している事例が見受けられます。

     しかし、この「雇入時の健康診断」は、常時使用する労働者を雇入れた際における適性配置、入職後の健康管理に役立てるために実施するものであって、採用選考時に実施することを義務づけたものではなく、また、応募者の採否を決定するために実施するものでもありません。

     また、健康診断の必要性を慎重に検討することなく、採用選考時に健康診断を実施することは、応募者の適性と能力を判断する上で必要のない事項を把握する可能性があり、結果として、就職差別につながるおそれがあります。

     したがって、採用選考時にいわゆる「血液検査」等の健康診断を実施する場合には、健康診断が応募者の適性と能力を判断する上で真に必要かどうか慎重に検討していただきますようお願いします。

    要するに、「健康診断はあくまで採用後の適性配置・健康管理のためにするものであり、採用決定のために実施するものではない。結果として就職差別につながる恐れがあるので、血液検査を採用時に実施するときには慎重にしてほしい。」という見解を、労働省(当時)が出したということです。いいかえれば、内定を出した後に、従業員に実施する健康診断と同様の位置づけで実施しろということになります。

    その後も、官公庁、警察、企業が肝炎やHIV感染者を採用差別するといった社会問題が起こり、再度、以下のような連絡が通達されています。


    ●「採用選考時の健康診断に係る留意事項について」
     平成13年4月24日付け事務連絡
    厚生労働省職業安定局雇用開発課長補佐から都道府県労働局職業安定主務課長あて

     標記については、平成5年5月10日付け事務連絡「採用選考時の健康診断について」により、公正な採用選考を確立する観点から、普段より各種啓発資料を活用するなど、雇用主に対する啓発・指導を行っているところである。

     今般、別添、健康局総務課長、疾病対策課長、結核感染症課長連名通知「当面のウイルス肝炎対策に係る体制の充実・整備等について」により、「C型肝炎ウイルス等の持続感染者に対する差別は、偏見を基礎にしたものであり、地域や職場においてこれらの偏見を排するよう、正しい知識の普及・周知徹底を図る必要がある」旨述べられている。

     ついては、職業安定機関においても当該通知等にも留意しつつ、今後とも、採用選考時の健康診断については、職務内容との関連においてその必要性を慎重に検討することなく実施することは、結果として就職差別につながるおそれがあり、採用選考時にいわゆる「血液検査」等の健康診断を実施する場合には、健康診断が応募者の適性と能力を判断する上で真に必要かどうか慎重に検討するよう雇用主に対する啓発・指導に取り組まれたい。(以下略)

    この事務連絡では、特に様々な症状がわかる「血液検査」を選考時に実施することには十分慎重になるべきだという方針が見られます。特に先の労働安全衛生規則第四十三条では、血液検査する項目を限定していますので、それ以外の検査を実施することの牽制になっているともいえます。

    (3)血液検査を実施するなら、その前に内定を出すべき。

    この経緯を見ても、血液検査を実施するなら、企業はその前に内定を出すべきという結論が分かります。なぜなら、採用時の健康診断は、雇い入れを前提に実施するものであり、選考のために実施するものではないからです。

    当然企業も、何らかの疾病が見つかった場合には、「採用を前提に」入社までに治療するよう指導します。それでも入社までに一切の業務に就けないほどの病状であれば内定取消の可能性はありますが、そうでなければ内定取消することはできません。

    したがって、学生の皆様は、本来「健康診断を実施する=内定した」と考えて結構だと思います。実際、ほとんどの企業がこのような扱いにしています(上記根拠を会社が熟知しているかは別ですが。)

    仮に内定告知前に健康診断をする旨言われた場合、「それは、内定をいただいたという理解でいいですよね。」と確認してみてください。

    先のコラム(「血まで抜かれて、不合格」~内定以前の健康診断への疑問~)でコメントした企業に間接的にヒアリングしたところ、今回の当落については健康診断の結果を反映したものではないが、来年から選考過程中に健康診断を実施するのは止めるという回答をもらっています。今年の「痛い」注射を広告労協が知ることで、来年以降同様の痛い目を出さないようにできたことは大きな成果だと考えます。

    就職活動生の立場は圧倒的に弱いものですが、法律は本来会社に厳しくできています。困ったこと、疑問点があったら、小さいことでも広告労協に報告してください。みなさんの声が、会社をむしろ「よく」していくのです。

    参考文献 全国IDDMネットワークホームページ「採用選考時の健康診断」
    http://www5.ocn.ne.jp/~i-net/20021130kenkousindan.html

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    2005.03.11

    「選ぶのは人事、選ばれるのは役員」論。

    先日とあるメーカーの若い役員の方と飲む機会があり、広告労協の活動や私のコラムの話をしたところ、特に「役員=お父さん、人事=お母さん論」に大きな共感をいただきました。

    その役員の方も採用は人事の慎重な選考の結果で十分なはずだとおっしゃっていました。事実技術職採用では役員面接は形式的なものといいます。しかしそれ以外は「毎年学生と会えることを楽しみにしている」役員がいるので実施しているということでした。役員も高齢になると若い人と話す機会がないのでしょう。

    しかし一定数を落とさなければいけない状況では、落とす側にも「理由」が必要です。高齢だからといって見る目がないとはいいませんが、全体のレベルが高く時間も短いためにあら捜しになっても仕方がないでしょう。無用な倍率で役員面接に送り込むことは、学生だけでなく役員にも採用当局にも、ひいては会社の将来にとっても不幸なことです。

    また会社は内定辞退を「学生の権利であり、仕方がないこと」と思っているかもしれません。しかし大きく見れば辞退が出ることは会社側に原因があります。特に選考の過程で学生側と本音で語り理解してもらうステップが欠けているのではないでしょうか。さらには役員面接自体が学生に与える印象は大きく、上述のような姿勢では役員面接そのものが辞退を加速させてしまっている可能性も否定できません。

    この「役員面接」と「内定辞退」の問題を突き詰めていくと、一つの答えが見えてきます。人事は企業の多くの新卒学生と接し様々な知見をもつ「採用のプロ」ですが職業上会社を代表する部署とはいえません。一方まさに役員は「会社の顔」であり、魅力ある経営者像こそが学生の心を捕らえますが、決して採用のプロとは言えません。すなわち「選ぶのは人事、選ばれるのは役員」の役目と言えるのではないでしょうか。

    新卒採用に限らず、現場の上げてきた計画や稟議を経営が承認するのは通常の仕事です。しかし新卒採用は未経験者の採用であるがゆえに、役員決議の中でも「本当にそれがベストの選択か」極めて微妙なものだといえます。それであれば他の稟議と同様、採用当局、特に人事担当役員が「これらの学生に内定を出します」と推せばよいはずです。そのためには採用当局が責任をもって学生を厳選しなければいけません。最後に人事担当役員自身がじっくり個々の学生と面接をして選考するのがよいでしょう。そしてそこまでが「会社側の」選考活動であると認識すべきです。

    そこからは、全役員の出番です。ここでは「面接」ではなく「対話」であることが重要です。役員は自社の魅力や風土・成長目標と計画・経営上の課題・具体的な部署で求められている人物像などを話し、学生は自分の魅力や性格・将来の目標とそれへの努力・現在の自分の課題・自分がどのように役に立てるかといったことを率直に語り合う。それが対等な立場での「対話」です。

    この「対話」の最大の効果は、優秀な人材が辞退する確率を下げられることです。優秀な学生は内定直後その会社のことを実は何も知らないことに気が付きます。しかし内定後人事にはなかなか相談できません。悩んだ結果多少でも知っている(つもりの)他社にいくというのが通常の構図でしょう。(原則として)内定を出すことを前提に役員との話の機会を学生にもたせることで、学生の理解と志望度が跳ね上がることは間違いありません。

    対話を円滑で意義あるものにするには、役員はあくまで学生は粗削りであることを前提にし、学生も役員は若者のことを十分には分かっていないことを前提にしなければいけません。それには採用当局が役員・学生双方にきちんとこの「対話」の位置付けと意味をオリエンすればよいことでしょう。

    またきちんと対話をすれば、会社と学生の意見の相違がはっきりしてくるかもしれません。あまりに食い違えば役員側から内定を出さない判断があってもよいでしょうし、学生の方も明確な理由で辞退できます。できれば役員判断で落選させるのは避けて欲しいところですが、万が一役員のお眼鏡にかからなかった場合でも人事は責任をとって入社後の教育を徹底していけば十分です。

    採用担当者は現在の役員面接の問題点を役員会に上げ、内定を人質にしない「対話」の意義を伝えることができれば、多くの役員は同意するのではないでしょうか。

    特に「毎年学生と会えることを楽しみにしている」役員の方ほど。

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    2005.02.19

    性差のない登用。性差のない採用。

    ダイバーシティ」とは直訳すれば「多様性」ですが、最近では「人材の多様性」として人種や男女差別のない登用の促進を指すことがあります。日本ではもっぱら女性の昇進問題として捉えられています。

    男女雇用機会均等法が施行されたのは1985年5月に施行され、86年入社が最初の年次となります。同年入社の女性はすでに社会人歴が18年目以上(間もなく19年目)となり、そのキャリアの長さや経験からいっても大企業の中でも十分中級幹部級以上になれる年齢と言えます。しかし広告業界だけでなく女性の幹部登用は進んでおらず、ダイバーシティという社会問題として取り上げられてきています。

    一方新卒採用の現実を見ると、広告業界は広告労協の調査では男性:女性=7:3程度と言われています。男女比率について個々の会社は「人物本位で検討した結果の数字」と言い訳するのが常であり、決して性差の因果を認めません。しかしこのボランティアを3年以上もしていると、女子学生の優秀さの実感と採用実績は明らかに乖離していると確信しています。実際面接官を経験した人も口をそろえて女子学生の方が優秀といいます。なぜ新卒採用にまでこのような歪みが存在するのでしょうか。

    答えは明白です。それは性差のある採用と登用は表裏一体の関係だからです。

    現状の女性登用のレベルから言えば、選考の最終段階で女性幹部の面接官が出てくることはまれであり、まして役員面接にはほとんどいないと言っていいでしょう。したがって採用の決定段階は旧来の男性的視点が支配していると言わざるを得ません。その微妙なバランスが7:3という数字に現れているのでしょう。きっと「女性は男性の半分以下」という暗黙のレートがあるのだと思います。

    性差のない採用には性差のない登用が必要であり、性差のない登用を進めるためには性差のない採用をしていかなければなりません

    経営層が「男性発想」である以上、彼らが最終決定権を持つ新卒採用で抜本的な性差解消を判断するのは難しいでしょう。ダイバーシティを一気には進められないのは仕方ありませんが、少なくとも雇均法以降に同条件で採用した新卒男女比と同じ割合で女性の管理職登用を進めていくべきだと思います。過去に採用した女性の早期離職を理由にする会社もあるかも知れませんが、男女同じ比率ではなく女性の方が早く辞める職場はダイバーシティに何かしらの問題があると思われても仕方がありません。

    それでもダイバーシティに手をつけられないのなら、今のうちから新卒採用の方の性差を先に抜本的に解消する決断をするしかありません。すなわち今の新卒採用の男女比を強制的にでも5:5に近づけるべきです。当面は6:4が現実的な目標でしょう。この数値程度の是正もできない会社が本気でダイバーシティに取り組めるのか、極めて疑問です。

    幹部級や役員に多くの女性が登用され、性差のない会社が当たり前になれば、過去に発表した「役員=お父さん、人事=お母さん論」というコラムも遺物となり、役員面接が最も人物本位の選考になるでしょう。女性社員だけでなく、いい男性社員を採用するのにも、ダイバーシティへの取り組みは有効だと考えます。

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    2005.02.17

    母子家庭は採用でマイナスになるか。

    本コラムでいくつか人権上不適切なエントリーシート事例を紹介したところ、早速以下のようなメールが私宛に届きました。

    突然のメール申し訳ありません。06生の大学生です。

    A社のESで、家族構成を問うものがあります。
    私は母子家庭です。ESに書くのは構いませんが、これが採用と関わりがあるのでしょうか?
    普通に考えても母子家庭がマイナスになることがあってもプラスになることはないと思うのです。
    採用に関わりがないなら書いても構いません。
    けれど採用に関係ないことを聞く必要があるのでしょうか。
    家族構成が選考に関わるとするなら、私は書きたくありません。
    家族構成の欄を白紙で出してもいいか悩んでいます。

    私はA社が第一志望です。でもESを見てがっかりしたのも事実です。
    もっと人物本位で見てくださる会社だと思っていたので・・・

    白紙で出すべきか書くべきかお忙しいとはおもいますがご意見お願いします。

    現実にこのような声が届くと、悩んでいるケースは決して少なくないと実感します。

    この会社の課しているエントリーシートは明らかに人権侵害です。一般的に人権啓発は会社の人事部門が担当することが多いのですが、その人事自らやってはいけない「いろは」のような設問を課していることを、大変遺憾に思います。

    採用時に人権上問題になるのは、家族構成や職業といった「本人と関係のないこと」と、信条・思想といった「本人が仕事をする上で関係のないこと」の2つに分けられると思います。前者に関して現実的には役員面接の前まではほとんど選考に影響しないと思います。現場の社員がそのような価値感で選ぶことはまず考えられないからです。しかし過去に何回もコメントしている通り、役員面接では全く違う価値感、すなわち古い人権感覚で判断されることはありえなくないと思います。このような文書を対外的に出すことを許可している会社ですから、なおさらです。

    この学生の声には、志望度が高いのなら少しでも通る確率の選択肢を選ぶべきだと言わざるを得ません。短い面接時間に「なぜ空欄なのか」といったという質問をされるぐらいなら、最初から堂々と書く方がよいとおもいます。そして役員面接までこぎつけたら、採用担当責任者に「まさか家族のせいで落とされたりしませんよね」と確認してみたらいかがでしょうか。

    はっきり言えるのは、志望度が低ければそんな会社は蹴るべきだということです。不適切な採用については広告労協が是正のための行動を検討していくことになります。みなさんの悔しさは広告労協が引き継ぎますので、ぜひ声をお寄せください

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    2005.02.15

    採用試験で「尊敬する人物」を聞くこと。

    日本の企業は終身雇用制度をとっているため、家族主義的なところが少なくありません。これを否定するものではありませんが、エントリーシートや面接で仕事と関係のない個人の自由な権利に踏み込んだ質問をすることもあります。ありがちな「尊敬する人物は誰ですか」という質問も、実は不当なものです。

    公正な選考採用のポイント(島根県)

    ■思想、信条、宗教などに関すること

    思想・信条や宗教、支持する政党、人生観などは、信教の自由、思想・信条の自由など憲法に保障されている個人の自由権に属する事柄です。これらのことを記述させ、また聞いたりして採用選考の場に持ち込むことは、応募者の基本的人権を侵すことになります。

    ■不適切な質問例

    あなたの信条としている言葉は
    尊敬する人物を言ってください
    家の宗教は何ですか・どんな本を愛読していますか
    あなたの家庭は、何党を支持していますか
    政治や政党に関心がありますか
    あなたの家では、何新聞を読んでいますか

    直接的に政治・宗教・思想に関する質問をすることは少なくても、「信条としている言葉」「尊敬する人物」については時々見られます。しかし採用試験で聞かれている以上その答えを選考の材料にしていると指摘されても言い訳はできません。

    家族主義であることと、個人の思想・信条を採用の材料にする