立場の線引き。
組織における立場と役割は、誰がその立場に立とうと不変です。言い換えれば「組織では立場が先にあり、人は後から当てはまる」と言えます。人は着任している間にその立場での役割を遂行する存在にすぎません。
労働組合の役員は常に組合員の選挙で選ばれます。誰が役員になろうとそこでの立場に当てはまることには変わりはありません。当然その役員が現場で働いている間は一従業員である立場にも変わりありません(職場を離れて労組専従になる場合を除く)。
組合役員に着任した人は任期中は従業員代表の立場として経営幹部と交渉します。しかしそのことでその役員が職場で不利な状況に追い込まれることはありません。これはそもそも「不当労働行為」という違法行為ですが、それ以前に会社も組合役員自身も組合の立場と職場での立場をきちんと線引きしているものなのです。
話し合いや交渉をすることが敵対関係であれば、営業活動も親子関係も成立しません。一方で「交渉は仕事」という当たり前のビジネス感覚が、仲間内の人間関係を重視する日本人には欠けているのも事実でしょう。しかしそれでも待遇を維持発展させるためにも交渉は必要です。このため誰か代表に託して交渉してもらう労働組合という仕組みは極めて日本的なものとも言えるでしょう。
労働組合の要職(委員長、副委員長、書記長)の在任中に昇進させ労働組合から脱退させることは、労働組合の弱体化になるため法律で禁止されています。したがってその期間は昇進しないわけですが、それにもかかわらず組合役員は選挙で選ばれた代表者であることを自覚し、責任をもって任期をまっとうします。そして次世代にその立場を譲り、普通の社員に戻ります。
しかし、たとえ一時期でも従業員代表として会社と話し合い合意していく経験をすることは経営全体を俯瞰するいい機会でもあり、その経験を買われむしろ昇進が早くなることも少なくありません。これもまた日本的会社のあり方そのものと言えるのではないでしょうか。
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