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2005.04.14

健康診断するということは、内定したということ。

2003年6月24日、2年近く前に発表したコラムの再掲載です。



会社が選考の時に実施する健康診断について、色々調べたところ、「健康診断するということは、内定したということ。」という結論に至りました。

(1)採用時に健康診断をする根拠

新卒採用に限らず、企業が雇用する際の健康診断の実施根拠は、以下の「労働安全衛生規則」にあります。

労働安全衛生規則(昭和四十七年九月三十日労働省令第三十二号)
第四十三条(雇入時の健康診断)
 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。
  • 既往歴及び業務歴の調査

  • 自覚症状及び他覚症状の有無の検査

  • 身長、体重、視力及び聴力(千ヘルツ及び四千ヘルツの音に係る聴力をいう。次条第一項第三号において同じ。)の検査

  • 胸部エックス線検査

  • 血圧の測定

  • 血色素量及び赤血球数の検査(次条第一項第六号において「貧血検査」という。)

  • 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査(次条第一項第七号において「肝機能検査」という。)

  • 血清総コレステロール、高比重リポ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査(次条第一項第八号において「血中脂質検査」という。)

  • 血糖検査

  • 尿中の糖及び蛋白の有無の検査(次条第一項第十号において「尿検査」という。)

  • 心電図検査


  • (2)規則の濫用、曲解に対する労働省の事務連絡

    しかし、この規則を根拠に、「健康診断の結果で採用判断をする」という企業が続出したため、平成5年に以下の労働省連絡が各都道府県職安課長に通達されました。(以下強調文字は筆者によるもの。)

    ●「採用選考時の健康診断について」
    平成5年5月10日付け事務連絡
    労働省職業安定局業務調整課長補佐及び雇用促進室長補佐から各都道府県職業安定主管課長あて

     近年、新規学校卒業者の採用選考時に、事業主が労働安全衛生規則第43条(雇入時の健康診断)を根拠としていわゆる「血液検査」等の健康診断を一律に実施し、公正な採用選考の観点から問題となっている事例が見受けられるところである。

     しかしながら、同規則は採用選考時の健康診断について規定したものではなく、また、「雇入時の健康診断」は、常時使用する労働者を雇入れた際における適性配置、入職後の健康管理に資するための健康診断であることから、採用選考時に同規則を根拠として採用可否決定のための健康診断を実施することは適切さを欠くものである。

     また、健康診断の必要性を慎重に検討することなく、採用選考時に健康診断を実施することは、応募者の適性と能力を判断する上で必要のない事項を把握する可能性があり、結果として、就職差別につながるおそれがあるところである。

     このため、採用選考時の健康診断の実施については、従来より必要に応じて指導を行ってきたところであるが、今般、労働基準局安全衛生部労働衛生課長から各都道府県労働基準局労働衛生主務課長に対し「雇入時の健康診断」の趣旨の徹底について別紙のとおり通知した旨連絡があったので、各都道府県においても、下記の文例を新規学校卒業者向けの求人説明会の配付資料に盛り込む等、事業主に対して「雇入時の健康診断」の趣旨を十分徹底し、応募者の適性と能力のみに基づく公正な採用選考を行うよう指導されたい。

    近年、新規学校卒業者の採用選考時に、労働安全衛生規則第43条に「雇入時の健康診断」が規定されていることを理由に、いわゆる「血液検査」等の健康診断を一律に実施している事例が見受けられます。

     しかし、この「雇入時の健康診断」は、常時使用する労働者を雇入れた際における適性配置、入職後の健康管理に役立てるために実施するものであって、採用選考時に実施することを義務づけたものではなく、また、応募者の採否を決定するために実施するものでもありません。

     また、健康診断の必要性を慎重に検討することなく、採用選考時に健康診断を実施することは、応募者の適性と能力を判断する上で必要のない事項を把握する可能性があり、結果として、就職差別につながるおそれがあります。

     したがって、採用選考時にいわゆる「血液検査」等の健康診断を実施する場合には、健康診断が応募者の適性と能力を判断する上で真に必要かどうか慎重に検討していただきますようお願いします。

    要するに、「健康診断はあくまで採用後の適性配置・健康管理のためにするものであり、採用決定のために実施するものではない。結果として就職差別につながる恐れがあるので、血液検査を採用時に実施するときには慎重にしてほしい。」という見解を、労働省(当時)が出したということです。いいかえれば、内定を出した後に、従業員に実施する健康診断と同様の位置づけで実施しろということになります。

    その後も、官公庁、警察、企業が肝炎やHIV感染者を採用差別するといった社会問題が起こり、再度、以下のような連絡が通達されています。


    ●「採用選考時の健康診断に係る留意事項について」
     平成13年4月24日付け事務連絡
    厚生労働省職業安定局雇用開発課長補佐から都道府県労働局職業安定主務課長あて

     標記については、平成5年5月10日付け事務連絡「採用選考時の健康診断について」により、公正な採用選考を確立する観点から、普段より各種啓発資料を活用するなど、雇用主に対する啓発・指導を行っているところである。

     今般、別添、健康局総務課長、疾病対策課長、結核感染症課長連名通知「当面のウイルス肝炎対策に係る体制の充実・整備等について」により、「C型肝炎ウイルス等の持続感染者に対する差別は、偏見を基礎にしたものであり、地域や職場においてこれらの偏見を排するよう、正しい知識の普及・周知徹底を図る必要がある」旨述べられている。

     ついては、職業安定機関においても当該通知等にも留意しつつ、今後とも、採用選考時の健康診断については、職務内容との関連においてその必要性を慎重に検討することなく実施することは、結果として就職差別につながるおそれがあり、採用選考時にいわゆる「血液検査」等の健康診断を実施する場合には、健康診断が応募者の適性と能力を判断する上で真に必要かどうか慎重に検討するよう雇用主に対する啓発・指導に取り組まれたい。(以下略)

    この事務連絡では、特に様々な症状がわかる「血液検査」を選考時に実施することには十分慎重になるべきだという方針が見られます。特に先の労働安全衛生規則第四十三条では、血液検査する項目を限定していますので、それ以外の検査を実施することの牽制になっているともいえます。

    (3)血液検査を実施するなら、その前に内定を出すべき。

    この経緯を見ても、血液検査を実施するなら、企業はその前に内定を出すべきという結論が分かります。なぜなら、採用時の健康診断は、雇い入れを前提に実施するものであり、選考のために実施するものではないからです。

    当然企業も、何らかの疾病が見つかった場合には、「採用を前提に」入社までに治療するよう指導します。それでも入社までに一切の業務に就けないほどの病状であれば内定取消の可能性はありますが、そうでなければ内定取消することはできません。

    したがって、学生の皆様は、本来「健康診断を実施する=内定した」と考えて結構だと思います。実際、ほとんどの企業がこのような扱いにしています(上記根拠を会社が熟知しているかは別ですが。)

    仮に内定告知前に健康診断をする旨言われた場合、「それは、内定をいただいたという理解でいいですよね。」と確認してみてください。

    先のコラム(「血まで抜かれて、不合格」~内定以前の健康診断への疑問~)でコメントした企業に間接的にヒアリングしたところ、今回の当落については健康診断の結果を反映したものではないが、来年から選考過程中に健康診断を実施するのは止めるという回答をもらっています。今年の「痛い」注射を広告労協が知ることで、来年以降同様の痛い目を出さないようにできたことは大きな成果だと考えます。

    就職活動生の立場は圧倒的に弱いものですが、法律は本来会社に厳しくできています。困ったこと、疑問点があったら、小さいことでも広告労協に報告してください。みなさんの声が、会社をむしろ「よく」していくのです。

    参考文献 全国IDDMネットワークホームページ「採用選考時の健康診断」
    http://www5.ocn.ne.jp/~i-net/20021130kenkousindan.html

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    コメント

    お世話になっております。私も先日テレビ朝日の最終面接の前に健康診断を受け、結果落とされてしまいました。プライベートを侵害され納得がいかず、大変苦しんでおりました。広告労協がこのように大きく訴え、不適切な選考に働きかけてくださることは、学生の私には出来ないことであり、心強く思います。どうもありがとうございます。

    投稿: 05生 | 2005.04.14 20:07

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