東海・九州地区の広告事情、特に私鉄ハウスエージェンシーについて。
2002年10月1日に発表した「就職フォーラム的交通広告論」が思いのほか評判となり、気をよくしてもう一本10月4日に発表したのがこのコラムです。
広告代理店を志望する上で、電鉄のハウスエージェンシーを研究し受験する学生さんは非常に多いです。しかし、東京と地方、特に東海・九州地区での事情は大きく違います。2003年度では名鉄エージェンシーへのワンポイントアドバイスとして応募者のみに送付したものですが、本邦初公開します。
<地方でも、「総合広告代理店」>
国際的な広告会社では、海外と日本の関係をOUT/INで呼ぶことがあります。
IN/IN :国内企業の国内展開
IN/OUT :国内企業の海外展開
OUT/IN :海外企業の国内展開
OUT/OUT:海外企業の海外展開
これにあてはめれば、地方の広告代理店は
IN/IN=地場企業の地場市場における展開
が基本的なビジネスドメインといえます。
東海や九州のように、一定規模の広告主と市場を同時にもっている地方では、地場の代理店も総合的な広告提案活動ができます。
東海地区には三晃社・新東通信、九州地区には電通九州、西広などがあります。特に、地元の有力私鉄から設立されたハウスエージェンシー(名鉄エージェンシー、西鉄エージェンシー)は、東京の小田急、京王、相鉄などのエージェンシーと比べ、大手広告代理店の支社とも競合しうる総合力を持っています。地元自治体の広告展開のように、地元に本店がある会社を優先に指名しなければいけない事情がある場合は、大手広告代理店を除いた地場代理店間での競合となることもあるようです。なお、電通九州は本店が福岡にある完全な地場代理店です。
取り扱うメディアは、ブロック3紙(中日新聞、西日本新聞、これに北海道の北海道新聞を加えた3紙)といわれる有力地方紙であったり、自社番組も多く制作しているテレビ局・ラジオ局が中心となります。これに加えて、交通広告が有力な媒体となります。また、一般のマスメディアを扱うこともあり、クリエーティブも地場代理店の重要なファクターとなっています。もちろんクリエーティブに割ける予算は東京に比べて1ケタも2ケタも違いますが、特徴のあるローカルCMや新聞広告などを制作し、各種広告賞などを受賞することもあります。
いいかえれば、規模の大小はありますが、東京の中小広告代理店よりもむしろ総合広告代理店的なバランスのある会社ともいえます。
<広告主について>
IN/INでの有力な広告主群はだいたいどこの地方も同じであり、
公共 :官公庁、自治体、電力、ガス、交通機関、公営ギャンブル
金融 :銀行、消費者金融
通信 :携帯、地元ISP
流通 :百貨店、スーパー、ショッピングセンター、不動産
観光 :テーマパーク、遊園地、観光地、ホテル、結婚式場
レジャー:パチンコ、スポーツクラブ
メーカー:自動車ディーラー、飲料(ボトラーズなど)、住宅、地元物産
学校 :大学、専門学校、予備校、英会話学校
といったジャンルが挙げられます。
これらの広告主群を見ていけば、地場代理店の中でも私鉄ハウスエージェンシーは、電鉄本体はもちろんのこと、グループの百貨店・流通・レジャー・観光・不動産などへの直接的な有利さがあり、また自動車ディーラーや飲料、地元物産なども、電鉄グループがらみの取引が多い業種なので、間接的な有利さがあると思われます。
<東京の私鉄エージェンシーとの違い>
東京・関東の私鉄エージェンシーも同様の取引先を持ちえるわけですが、東海・九州の私鉄エージェンシーや地場代理店と違う点は、地元メディアのカバーする範囲とその金額の効率が違うということです。
すなわち、東京・関東というマーケットはとても広く、またナショナル広告主とメディアのマーケットが重なるため、費用が膨大になり、かつ沿線近辺に絞ることが困難なので効率が悪くなります。これに対して東海・九州(福岡)というマーケットは、電波メディアや新聞メディアのカバーする範囲にちょうど入っており、その費用も適当な規模と効率になっています。
したがって、地元広告主をしっかりもっている地場代理店は、マス媒体に関しても大手代理店支社にも対抗することもあります。これに対して、東京・関東の私鉄エージェンシーなどになると、自社の交通広告や流通グループを生かしたSP作業を中心とせざるを得ません。
<志望者が知っておかなければいけないこと>
(1) 地元を良く知る。沿線を良く知る。
地域のIN/INを担う広告代理店で働く上で、もっとも大事なことは「地元を知る」ことです。広告主や媒体社は当然地元出身の人が多く、地縁血縁が濃いわけですから、主要な地名の読み方ぐらいは覚えておくべきでしょう。また広告主や媒体社のトップの出身大学・高校ぐらいは知っておきたいものです。また地元小学校の社会科の教科書に載っている程度の地元の歴史・産業・文化などは知っておく必要があるでしょう。
また私鉄ハウスエージェンシーを目指す人であれば、その電鉄沿線のマーケットのポテンシャルや、系列の百貨店の比較などを研究しておくべきでしょう。例えば、メジャーな駅名はもちろんのこと、その電鉄で通っている通勤・通学者数、ターミナル駅の平均乗降客数、高校・大学などの文教施設、沿線のレジャー施設、神社仏閣(初詣など)、季節の催事(花火大会など)、こういうものを数字も含めすらすらと言えるような面接がもっとも効果的なはずです。
(2)広告主に貢献するように、地元にも貢献を。
地元広告主にとって重要なのは、地元マーケット自体の繁栄です。広告業界も「地場産業」の一つとして、地元経メディアとともに、経済の活性化に役立たなければなりません。広告マンは、広告主、メディア、地元住民の3者がハッピーになるために、広告を通じて貢献していくという気概が大事でしょう。
また交通媒体に関していうと、全国規模の広告主にとって、JRや営団地下鉄(大阪市営地下鉄)以外の媒体は東京の私鉄ですらローカル的なイメージとなっており、単純なイメージの序列で選ばれていくという傾向があります。すなわち私鉄エージェンシーに勤務するということは、自社媒体売上の向上のためにも自分なりの地元・沿線イメージ戦略・ブランド戦略を持つことが重要になってきます。
例えば京王線には京王閣(競輪)や府中競馬場などがあってギャンブル路線とイメージする人もいます。しかし、京王電鉄は駅舎をTVドラマのロケに積極的に開放したりして、CMやドラマでの露出量は一時期大変なものがありました。これは京王沿線のブランド価値を上げるのに貢献していると思います。
すなわち、地方の私鉄エージェンシーに勤めるということは、
・その沿線の住民がクライアントであり、
・沿線のブランド価値(ひいては土地の資産価値)を高める
というミッションをもつといいかえてもいいのではないでしょうか。この意味では、面接などでは、イメージ打破論や、他の沿線との比較論なども効果的です。
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