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2005.01.01

「役員=お父さん、人事=お母さん」論。

新年明けましておめでとうございます。

2003.10.25に発表したコラムを、本日再掲載します。お正月の今日、実家に帰っている学生も多いでしょう。多くの05生が役員面接の前にプリントアウトして読み返したという本コラム、ぜひご両親といる今の時期に読んでいただければと思います。



●なぜ役員面接で落選者が出るのか?

広告代理店に内定した03生の男子学生に、「どの段階で内定の手応えがあった?」と聞いたところ、「役員面接の段階まで来たら、人事の方は自分の味方なのだと実感しました。」と答えていました。学生にとって一方的に見える採用活動ですが、彼の言葉で採用する側にとっても極めて人間的な思惑や感情があるものなのだと思いました。

事実上の最終試験である役員面接は、人事が経営陣に対して「これだけいい学生を残してきました。」ということを示す、「採用当局自身のプレゼンテーション」ともいえます。人事は現場のニーズや将来の成長計画に基づき、必要な人材像と応募学生を照らし合わせ、様々な能力・実績・個性を持った学生を厳選します。人事は採用のプロですから、人事のお眼鏡に最後まで残った学生は、全員採用してもそれぞれが十分通用する力を持っているはずです。

では、なぜそのような学生たちからも最終面接で落選者が出るのでしょうか。

●人事が役員に最終面接を「させる理由」。

役員という人々は責任ある立場であると同時に極めて多忙であり、事務方がぎりぎりまで検討を重ね下準備をしたものを、短時間の取締役会で議論・決裁するのが常です。たいていの場合議案は絞り込まれ、YesかNoか分かりやすい判断を出すだけとなっています。

採用(労働契約締結)も重要な役員会決議事項の一つです。しかし、労働契約が通常の契約行為と決定的に違うのは、憲法第22条「職業選択の自由」の精神に基づき、労働者は「いつでも」「何の損害賠償もなく」雇用契約を破棄することができるということです(民法第627条(期間の定めのない雇用の解約)労働基準法第16条(賠償予定の禁止))。採用内定も労働契約の一種と見る判例が確立されており、内定者がいつでも辞退できる根拠となっています。

経営が下した決定・方針は従業員にとって絶対です。しかし採用に限っていえば経営判断も一介の学生に簡単に一蹴されることもあり、人事の幹部にとっては上司たる経営者の決定を実現できない恐れがあるわけです。最終面接に残るような優秀な学生であれば、他社にも内定をとり辞退するという確率もますます高くなっていきます。

したがって、人事がいかに素晴らしい人材を発掘してきたとしても、採用予定人数だけを役員面接に送りこむわけにはいきません。役員に採用予定数以上の人数と面接させ、一定の人数を落とさせるのも、人事が役員に採用の最終的な判断をゆだね、責任をとってもらうためだと考えられます。

●役員は何を基準に当落を決めるのか。

役員は応募総数のうちの何人が最終に残ったか知っており、個々のプロフィールの簡単なレクチャーを受けていることも想定されます。最終に臨む学生として「それなりに優秀である」ということが人事当局によって保証されていると認識しているわけです。

では、厳選された学生を前に最終判断を迫られる役員は、どのような視点で学生を見、選んでいくのでしょうか。それは、ひとこと、「印象」です。

面接の場で役員の考えていることは、

(1)極めて優秀な学生には「本当にうちに入社するのだろうか。」

(2)ボーダーライン上の学生には「本当に現場で通用するだろうか。」

(3)すべての学生に対して「うちの社風に合うだろうか。」

の3つに絞られるといっても過言ではありません。そして、面接を通じ、極めて「直感的に」判断しているのです。

このように、通常の選考過程と役員面接は全く種類の違うものであることが分かると思います。最終面接までこぎつけるが、役員面接がうまくいかない、という学生の方は、まずこの背景を理解することが大事でしょう。

●男子学生にとって、役員=彼女のお父さん、人事=彼女のお母さん。

この構造は、男子学生にとって「彼女の母親には気に入られても、父親とはうまくいかない」というのにとても似ています。

母親は娘の彼氏と接するときに、彼のいい点を細かいところまでいろいろ見出し、父親にもいいところを説明して勧めてくれます。一方、父親は彼の細かいところには興味はなく、「この男は娘にふさわしいかどうか」「娘を傷つけることがないか」といった印象しか見ないといったことはよくあるケースです。初対面の父親にあなたの細かい点をアピールしても、相手はそんなことそもそも聞いちゃいないのです。

彼女の母親があなたのいいところを見出してくれるように、人事はあなたのことを多角的に評価しています。しかし、彼女の父親があなたを「印象」で評価するように、役員はあなたを「印象」で判断しているのです。

役員面接で細かい点に拘泥したアピールは逆効果です。むしろその会社の「社風」に合っているか、元気はあるか、逆境に耐えられるか、といったことを、彼女の父親にアピールするがごとく、明るく大きく答えてみせることが大事だと思います。

●女子学生にとって、役員=自分のお父さん、人事=自分のお母さん。

女子学生にとって人事が彼氏のお母さんだとするなら、人事=姑になります(苦笑)。むしろ女子学生にとっての役員や人事は、「自分自身の両親」のようなものなのではないでしょうか。

両親にとって自分の娘を社会に送り出すということは、結婚よりも不安なことなのかもしれません。特に忙しい業界や、転勤もありえる会社などへの就職は、社会人の先輩たる父親は特に心配するものです。

役員も人の親です。もっとも身近な女子学生は、自分の娘だけかもしれません。人事や役員があなたのことを、両親と同様の視線で見ている可能性は高いでしょう。社会はあなたが思っているほど甘いものではありません。採用当局はあなたが「社会や仕事の厳しさについていけるかどうか」を見極めるために選考を繰り返します。役員面接ではもっともその傾向が大きいのではないでしょうか。

女子学生がもっともアピールすべきことは、「社会への巣立ちに向けた決心」です。人事の選考・役員面接で成功するためには、まず自分の両親に自分の好きな広告業界に行く決意をプレゼンし、見事に勝利することが必要です。その経験から生まれる「自信」は、必ず人事・役員に届くと確信しています。

●就職活動は、まずは自分の両親と話すことから。

文頭に書いたとおり、採用活動は採用する側にとっても極めて人間的なものです。決して筆記や英語の点数の大小だけで決まるものではありません。「印象」や「自信」といった、計量できない要素をいかに大きく身につけるかが、最終的な役員面接を突破する力になります。

そのためには、男子女子問わず、まず自分の両親と徹底的に話し合ってください。両親こそ広告業界を「印象」でしか判断していないかもしれません。そんな両親に自分のやりたいことや将来像をきちんとプレゼンし、最大の応援者になってもらうこと。それがあなたの就職活動をもっとも後押ししてくれるのではないでしょうか。

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コメント

 あけましておめでとう~
 をぉ! 新年早々、名コラムが。
 男女差を越えた結論がすばらしい。06生は心して読むようにネ。
 努力する人に幸アレ。また1年間よろしく>皆様。

投稿: 挨拶専用85 | 2005.01.01 04:32

 わーぉw もう1個コメ。
 新年早々、言語指導できるゾ。

> 新年明けましておめでとうございます。

 あっはっは。よくある間違いですな。
----- Original Message -----
「新年明けましておめでとう」。これは、「新年」と「明けまして」の意味が同じなので、間違い!(URL参照)

 ことしもよろしく!

投稿: 挨拶専用85 | 2005.01.01 23:00

トラックバックさせていただきました。

就職活動中の大学生です。広告労協のコラムは、いつも参考にさせていただいております。ありがとうございます!

投稿: せぱたく郎 | 2005.04.04 18:16

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